「今江監督はよくやりましたよ。なのに三木谷オーナーは…」初代監督・田尾安志が嘆く20年間変わらない「楽天球団の体質」
「球団は三木谷オーナーの持ち物じゃない」
結局、1年目のシーズン成績は38勝97敗1分の最下位。田尾は3年契約ながら1年で解任となった。三年計画で補強、育成、普及についてのビジョンを考えており、すでに来季を見据えて、ダイエーの王、ロッテのバレンタイン、両監督にレンタル移籍による選手補強を打診してOKをもらっていたところだった。 クビになる際には、とにかく今いるスタッフは極力残してもらいたいということだけを伝えてチームを去った。 ファンも選手も田尾の意志と熱意は分かっていた。最終戦はヤフードームでのソフトバンク戦。スタンドからは田尾コールが巻き起こり、選手によって最下位チームを率いた監督の胴上げが行なわれた。 「100敗もしそうな監督の胴上げなんかおかしいから止めてくれと頼んだんです。そしたら、『これは僕らの気持ちなんで、受けてください』と選手たちに言われてね。僕がオーナーともぶつかりながら、1シーズンブレずにやったのを選手たちも感じてくれたんだろうと思います」 あれから20年が経過した今年10月10日。楽天は、最下位という下馬評を覆して交流戦優勝を成し遂げた今江監督を、2年契約の1年を残し解任した。田尾は三木谷オーナーへの批判を隠そうとしない。 「今江監督は本当によくやりましたよ。オーナーは、選手の人生や生活を預かりながらチームを良くしようと24時間考えている監督の仕事をどう思っているのか。20年経ってもオーナーのひと声ですべてが決められてしまう体質が変わらないことが嘆かわしい。球団は個人の持ち物ではないんですよ」 楽天が選手会の動きによって誕生した球団であればこそ、現場の野球人に対するリスペクトを欠いて欲しくはない。今、田尾は国指定の難病「心アミロイソーシス」と闘いながら、評論活動を精力的に行っている。言説も行動も曲げないのは、現役時代から変わっていない。 取材・文/木村元彦
木村元彦