焼き肉食べ放題「女性半額」が“差別”だと炎上…不満ある男性が「法的に争う方法」はある?
「女性半額キャンペーン」は“公序良俗違反”になりうるか
では、法的な訴えを提起することの合理性はさておき、本件の女性半額キャンペーンは、判例で無効とされた「男女の定年差別」のような「不合理な差別」として公序良俗違反にあたりうるか。 荒川弁護士:「寿司・焼き肉等の食べ放題について『男女別料金』を設けている飲食店が数多くあり、これまで男性が異議を唱えたという話を聞いたことはありません。社会的に許容されてきていると考えてよいでしょう。 ましてや、今回のキャンペーンは合計8日間という一時的なものにとどまり、軽微なものです。 また、一般に女性のほうが男性よりも食べる量が少ないといわれています。『女性料金』のほかにも『シルバー料金』『子ども料金』が置かれているケースもあり、それらと同じ趣旨で設けられたものと考えられます。 現に、焼き肉チェーンの説明では、過去の食べ放題での注文数が、女性の方が男性より4皿少なかったとのことであり、客観的データに基づいてもいます。 料金の差も、女性料金が男性料金の半額とはいえ、1回あたり2000円未満にすぎません。また、女性客・カップル客・ファミリー客をターゲットとしたマーケティング戦略の一環であることがみてとれます。社会常識を逸脱しない限度で営業戦略をとることは、企業の営業の自由の正当な行使です。 これらのことを考えると、女性半額キャンペーンは不合理な差別とはいえず、公序良俗違反にあたらず有効・適法だといえます」 いうまでもなく、世の中にはまだ、不合理な差別と思われるものに出くわす場面がある。中には、過去に差別と認識されずに許容され放置され続け、時代が進むにつれ初めて差別として意識されるようになったものもある。 しかし他方で、その背景や考慮も考えず安易に「差別」のレッテルを貼ることは、正当な表現行為や営業行為に萎縮効果をもたらすものであり、厳に慎まなければならない。なぜ憲法・法律が不合理な差別を禁じているのか、歴史的にどのような差別によってどのような悲惨な事態が起きたのか、考えることは大変重要なことといえる。
弁護士JP編集部