「男性は私1人だけだった」 着物学校に入った黒人男性が苦労した結果得た「かけがえのないもの」
着物は日本文化の完璧な象徴であり、多くの外国人にとって、この国の最も魅力的な部分を体現している。自然で控えめな美しさ、洗練された上品さ、何世紀にもわたって磨き上げられた複雑な芸術性など、不可侵なイメージが心に溢れ、多くの人が抗いがたい魅力を感じる。 【写真】着付けの免許まで取得したチャック・ジョンソンさんはさすがの着こなしだ ■2つの偶然の出会いに導かれて アメリカ・デトロイト出身で、2003年から日本に住む映画監督で武道指導者のチャック・ジョンソンさんも、着物に惹かれた1人だ。2003年、初監督作品であるサムライコメディ『アブサンの拳 』を監督する中で、彼はこの魅力に気づいた。
「映画の中で、私はずっと着物を着ているキャラクターを演じたんです。それが着物に興味を持ったきっかけです」と、46歳のジョンソンさん。 この着物への憧れが、着物の着付け免許を持つおそらく唯一の黒人男性になることになるとは、ジョンソンさんも当時は思いもよらなかった。 しかし、2つの偶然の出会いがその道を切り開いた。1つ目は、映画の共演者のおかげだった。彼女は偶然、着物に関する著書もあるシーラ・クリフさんと友人で、彼女を紹介してくれたこと。
「シーラは英語を話せるし、私は日本語が不自由だから、何か学べるだろうと思った。でも、シーラが英語を話すという事実は、彼女が私と分かち合ってくれた豊富な知識に比べればとるに足らないことでした」 【写真14枚】ジョンソンさんとハリスさんの着物姿 ジョンソンさんはシーラさんのもとで5年間個人的に着物を学び、彼女は自身が知識の宝庫であることを証明した。着物に関する事実上の百科事典のような「先生」に出会ったことで、ジョンソンさんは完全に着物にハマってしまった。シーラさんが本の執筆で忙しくなければ、今でも彼女の指導を受けていただろうと話す。
そして、これが2つ目の幸運な出会いにつながる。この時は、電車の中でシーラさんのおかげで学んだ江戸小紋の着物を着た女性を見つけたのである。 「近くで見ないとわからないような、小さくて複雑な模様があるんです。1.5m以上離れて見ると、ただの無地の着物にしか見えない。その控えめな表現は、着ることのできる日本の哲学のようです」(ジョンソンさん) ■資格の取得を勧められ… 彼はその女性の横に座り、彼女の着物についてコメントをした。すると、女性は、なぜ彼が着物についてそんなに詳しいのかと尋ねた。ジョンソンさんがその理由を伝えると、さらに知識を深められる場所があると教えてくれた。その女性は偶然にもハクビ京都きもの学院の講師だったのだ。