「自動車ではなく自転車だから大丈夫…」は通用しない 11月から処罰対象となった「自転車の酒気帯び運転」について弁護士が解説
今年11月から自転車に関する道路交通法が改正され、「ながらスマホ」の罰則が強化されるともに、「酒気帯び運転」が新たに罰則適用となった。具体的にどのような罰則となるのか、実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】 自動車免許を自主返納した年寄りです。最近の楽しみといえば、馴染みの店で一杯やること。その店に向かうために、せっせと自転車を走らせています。でも、店のママが「今度から、飲酒で自転車に乗ると捕まるよ」って、お酒を出してくれず……。本当に自転車の飲酒運転でも、逮捕されてしまうんですか。 【回答】 自転車の飲酒運転は『道路交通法』違反です。道路交通法上、自転車は「軽車両」の一つで、軽車両は自動車と総称し、「車両等」の括りを受け、規制があります。 同法は「車両等の運転者の義務」の一つとして65条の1項で「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」と定め、自転車運転者が飲酒運転をすることは、もともと違法です。そして、65条1項に違反し、酒に酔った状態(アルコールの影響により、正常な運転ができない恐れがある)で車両等を運転すると「酒酔い運転」となり、5年以下の懲役、または100万円以下の罰金で処罰されます。
なんにせよ、「車両等」ですから、当然に自転車も含まれ、酒酔い運転は処罰されますが、酒に酔った状態とはいえない場合でも、飲酒運転の危険性は否定できません。そこで65条1項に違反し、呼気1lにつき、0.15mg、または血液1mlあたり、0.3mg以上のアルコールを保有する状態で運転した場合には、「酒気帯び運転」となり、3年以下の懲役、または50万円以下の罰金で処罰されます。ただ、今年10月までは軽車両は除外されていたのです。 それが11月以降、改正で自転車は除外の例外になり、処罰対象となりました。酔ってないから大丈夫と思っていても、処罰される可能性があるわけです。歩行者にとって自転車は程度の差こそあれ、自動車と同様に危険であり、規制はやむを得ないと思います。 今年見た映画に、仕事を終えた主人公が馴染みの店でビールを呑み、自転車で帰宅するシーンがありました。しっかりした運転ぶりで酒酔い運転ではないにせよ、65条1項違反が気になったものです。 ビール中瓶1本で、血中アルコール濃度が0.2~0.4mg/mlになるため、今後は酒気帯び運転で処罰されるかもしれません。 【プロフィール】 竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。 ※週刊ポスト2024年12月20日号