“会社員作家”石田夏穂が描く中間管理職の悲喜劇 体重管理に必死なマッチョ係長が仕事でてんてこまい
■主人公はマッチョな中間管理職 「小説の中では自分の好きな登場人物になりきれる」。そう話す石田さんが『ミスター・チームリーダー』の主人公として描いたのは「過度に真面目な人」。大手リース会社の係長として奮闘しつつ、プライベートではボディビル大会の出場を控え体重管理に余念がない男性、後藤だ。 「0.1キロとか0.2キロとか、体重がちょっと増減するだけで“キーッ”となっている、ある意味で乙女心のあるようなマッチョな男性を描いたら面白い、と思って」
後藤は仕事にもストイック。後藤の目には、同僚たちがどこかサボっていたり、自己管理ができていなかったり、不甲斐ない存在に映る。どうしてちゃんとやれないのだと、不満が辛辣な言葉や態度で相手に向かってしまうときもある。一方で、上司からは接待やトラブル対応などを命じられ、てんてこまい。 そんな上からも下からも振り回される中間管理職の難しさと、体重のコントロールだけはなんとしても死守しようとする必死さがユーモラスに絡み合っていく。
「普通に考えたら“いい職場”なんです。でも主人公があまりにも“きっちりさん”だから、すごいストイックさゆえにあれもこれも気になって……。その真面目すぎが迷惑がられて、職場で浮いているような人を書きたかった(笑)」 ■上司って本当に“無理ゲー”だなと その思いの背景には、意外にも「憧れ」があるという。 「私は全然真面目じゃなくて、仕事中、普通にお菓子とか食べちゃうタイプなんです。だから自己管理を徹底できる人に憧れがあって、そういう人の目から見た職場はどのように映るのかな、と思い、小説の中で想像しました」
もう一つの憧れは「強いリーダーシップ」という一面にも向けられている。 「今の世の中、上司って本当に“無理ゲー”だなと思っているんです。やらなければいけない使命や業務があっても、部下に“オラー、やれー!”とか言えないですから。人を動かすときには、多かれ少なかれ強引に進めないといけないときもあると思うんですけど、そういうリーダーシップだとパワハラと言われてしまう。実際、私自身、職場であまり怒られた経験がないんです」