技術継承と染め直し、D&DEPARTMENTのファッション産業の課題への向き合い方
「残反購入だけでは貢献できない」、技術継承のための新プロジェクト
「ライフストック」では「10産地10生地で100種類作ろうと考えた。半分は懇意にしている産地に頼み込み、半分は中小企業診断士の資格を生かし商工会議所を通じて声をかけてもらった」。現在は小さな地域を含めると20カ所程度と取り組む。人気はビンテージ生地やマス見本(色合わせのサンプル布で同じ柄を色違いで数色プリントした布)だ。「特にマス見本は絶対に捨てられる運命なうえ、レアでもある。こうした背景をお客さまに説明するとマス見本ファンになり、マス見本狙いの方も増えた」。
23年から「アーカイブス」をスタートした。残反の入手が難しくなったからだ。「理由は2つある。1つ目は16年頃に日本で始まったSDGsの活動の気運が高まるにつれて、残反を活用したモノ作りをする人が増えたこと。2つ目はメーカーの生産量が減ったこと。生産すればその分残反もB反も出るが、特にこの3年少なくなったと感じる。そして、残反を買うだけでは産地に貢献できなくなったとも感じていた」と話す。
「1mが8000~1万円の手が込んだ特殊な生地は、高度な技術がないと作ることができない。他方で一般的には高額で購入が難しく、海外ブランドに販売していることが多い。こうした素晴らしい技術を残したいし、作る職人がいることを知らしめたいと思った。そのためには高度な技術を要する生地を作り続けて発信することが大切で、バッグは要尺が少ないので気軽に持つことができる価格で提案できると考えた」。
「アーカイブス」では「産地の定番で一般的に知られている生地でも次世代の担い手や需要を生み出す必要があると考え」会津木綿や伊勢木綿、久留米絣などの活用も始める。3月から箱型バッグを順次発売する。小幅生地の特性を最大に生かし、生地の無駄が極力出ないパターンを作成した。「生地にかけられる金額を上げ、工場と一緒に歩む持続可能なものづくりのカタチを探る」。