酷暑でも球児の本音「甲子園だけが批判される」「クーリングタイムは正直、逆効果」「試合の流れが…」感じる“世間や高野連とのギャップ”
「クーリングタイム明けは体が冷えてしまう」
この試合、明徳義塾は失点した6回に二塁手・平尾成歩主将が交代している。好守備を見せた直後に足がつったためだった。 今大会ではクーリングタイム明けに足をつる選手が目立った。選手間では「クーリングタイム明けは体が冷えてしまう」、「10分間の過ごし方を変えても上手くいかない」といった声が上がる。 そして、選手から聞こえてくるのは、クーリングタイム自体に反対する意見だ。誹謗中傷の対象となる可能性があるので実名は避けるが――ある選手が本音を明かす。 「クーリングタイムは正直、必要ないです。体が冷えて動きが悪くなりますし、けがをしてしまいそうな感じがするので、チームメートとは逆効果と話しています。体のことを心配していただけるのはありがたいですが、自分たちは暑い中で試合をする前提で普段の練習をしています。試合よりも練習の方が何倍もきついので、クーリングタイムがなくても大丈夫です。試合中に水分補給やベンチで休む時間もありますから」
猛暑の屋外に試合…野球だけではありません
高校野球の大会を真夏に開催する是非を問う声や、甲子園ではなくドーム球場に変更すべきという声にも違和感があるという。 こう世論の声に反論する。 「猛暑の屋外で試合をするのは野球だけではありませんし、野球も小学生や中学生の全国大会が真夏に開催されています。甲子園だけが批判されたり、議論の対象になったりするのはおかしいと感じています」 クーリングタイムが必要ないと指摘する球児に共通しているのは、高野連や世間とのギャップである。 普段はエアコンの利いた部屋で仕事をして外に出ると暑さに悲鳴を上げる生活を送っている大人と、甲子園出場を目指してグラウンドで日々練習する球児とでは暑さに対する認識が異なる。むしろ、体を10分間冷やしてから再びプレーする方が危険と感じたり、体に異変が生じたりする球児は少なくないのだ。
大会中、熱中症が疑われる選手は56人に上った中で
高野連は熱中症対策として、7イニング制の検討も始めている。時代に合わせた変化が高校野球にも必要と賛同する指導者がいる一方、その前に導入すべきことがあると反対する指導者もいる。 今夏の甲子園に出場した球児の中で、7イニング制の導入に賛成する声は圧倒的に少数派。熱中症対策を講じるのであれば、「DH制」や「投手が出塁した際の臨時代走」、さらには選手を一定の条件の下で入れ替えられる「リエントリー制」を挙げる。“現場を知る”球児たちは、最も体力を消耗する投手の負担を軽くする方法が効果的だと考えている。 大会本部によると、今夏の甲子園では熱中症が疑われる選手が56人、延べ58件に上った。このうち、37件は試合中に足がつるといった症状が現れたという。試合後や試合後のクールダウン中に症状が見られたのは21件だった。 選手の体調面を心配して高野連が策を講じる方向性は間違っていないし、観客やアルプススタンドへの応援に駆けつける生徒への考慮もしなければならない。ただ、熱中症を引き起こす原因の分析をし、球児の本音に即した手段になっていなければ、中身が伴わない表面的な改革に終わってしまう。 <高校野球特集:つづく>
(「甲子園の風」間淳 = 文)
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