ターンベリーの魔法が解けた瞬間。09年全英オープンのトム・ワトソン【レジェンドたちの全英オープン④】
それは71ホール目まで続いたターンベリーの魔法が解けた瞬間だった。 ショートラフからのアプローチは「(パターで)ひどいパットを打ってしまった」と寄せられずボギー。シンクと並び4ホールのプレーオフに突入したのだが「次から次へと悪いショットが続いた。勝つためにやるべきことをやったシンクを褒めるべき。彼の相手にはなれませんでした」と白旗を揚げた。 記者会見の会場に登場したワトソンは記者たちの沈痛な面持ちに「葬式じゃないんですよ(笑)」と粋な挨拶で語り始めた。 「ひょっとするととんでもないことになっていましたよね。でもとんでもないことにはなりませんでした。がっかりしています。心が引き裂かれるようで簡単には受け入れらない。勝てる位置にいたのに最終ホールでチャンスを逃してしまいました」 それでもワトソンはこういった。「今週感じたのは(人々の)大きな温かさと何らかのスピリチュアルなもの。素晴らしい思い出の残るターンベリーで再び素晴らし思い出を作ることができました」
つい最近、15年前の敗戦について改めて感想を聞いた。 悔しいのか、それとも2位に満足しているのか? するとワトソンは即座に「いまでも悔しい」と全英6勝目を逃した心境を打ち明けた。 59歳で全英に勝っていればそれは間違いなく奇跡だった。
川野美佳