豪デカコーン企業「Canva」が日本で目指すのは「日本企業として認識されること」
「デザインの民主化」で急成長を遂げたオーストラリアの新進テック企業「Canva」。同社が手がけるデザインソフトは、全世界で1億9000万人以上の月間アクティブユーザーを獲得している。創業10年で売上高は年間23億ドル(約3380億円)を超え、企業価値は390億ドル(約5兆7400億円)というデカコーン企業だ。 発売中のForbes JAPAN別冊『WORK MILL』では、Canvaのシドニー本社に加え、日本市場を担当するチームを取材した。Canvaの日本語版は2017年から提供を開始し、さらに成長するために今年7月、渋谷にオフィスをオープンさせた。 日本チームを率いるカーン・シェンと植山周志が、日本における戦略と意気込みを語る。 『コロコロコミック』にオリジナル漫画を掲載して小学生にアプローチを図ったかと思えば、テレビCMでは戦国武将に扮した北野武と劇団ひとりがひと芝居……。Canva Japanが展開するプロモーションが、鮮烈なインパクトを放っている。 本社が掲げる「truly local」の延長線上で、日本人スタッフが舵を取るハイパーローカリゼーションが、予想の斜め上を行く戦略につながっている。日本のカントリーマネージャーを務めるカーン・シェンは言う。 「ローカルのスタッフと、ここ日本での拠点がなければ実現できないことでした。幸い、漫画は子どもからウケがいいみたいですよ」 ■メキシコで「いらすとや」が人気沸騰の背景 日本チームは1年ほど前に正式に発足し、業務委託も含めると20人強のスタッフがいる。人口、経済力、インターネット利用者数、どれをとっても日本市場は魅力的で、日本語版のリリース以降、Canvaにとって日本は「非常に重要な市場」(シェン)になり、投資が一気に加速した。 5年ほど前に本国のCanvaに入社した植山周志は、日本での知名度がほぼなかったころから日本市場を開拓してきた。徹底したローカリゼーションで「Canvaの製品を知った人が、これは日本の製品で、日本企業に違いないと思い込む」レベルを目指す。 そこまで行くと、オーストラリア企業としての色合いを失ってしまうのではないか。 「一番に考えなければならないのはユーザーです。一部のプロではなく、日本人の99%が使いたくなるようなツールであるべきです。それには、馴染みのある要素が必要です」(シェン) そこでフリー素材サイトの「いらすとや」と提携し、日本の文化や好みに適したイラストをCanvaのプラットフォーム上で使えるようにした。「今や、いらすとやの一番のファンはメキシコなんですよ」とシェンは明かす。 Canva Japanの予想を超える快進撃。次の一手が予想できない。
Forbes JAPAN 編集部