多士済々の阪神投手陣でチャンスを得るのは誰か 藤川球児新体制下で注目すべき「投手3選」
高卒5年目で「本物の強さ」を身につけるべき左腕
2:門別啓人 高卒3年目のシーズンを終えた門別啓人の現在地を捉えた藤川監督の言葉は興味深かった。10月下旬のフェニックス・リーグを視察した後に、次のように評した。 「1軍でプレーをしていたので、少し抑えたいという気持ちが強くなってくる。でも伸びていかないといけない選手なので、抑える事を中心にすると、案外近道なようで遠回りになる。もっと大きなところをしっかりやっていった方が遠回りなようで近い。デビューした頃のように、また簡単に戻ると思います」 高卒1年目から1軍デビューを果たし、昨秋には岡田前監督が能力の高さに惚れ込み、先発ローテーション候補として期待をかけてきた。 だが、24年はシーズン初先発だった5月3日のジャイアンツ戦で3回6失点と打ち込まれるなど、5試合で2敗、防御率4.50の結果に終わった。早い段階からトップレベルを経験し、“1軍で抑えること”に意識が向きすぎているのかもしれない。藤川監督の言葉は、弱冠二十歳の近未来と、秘めたる投手としてのスケールも考慮しての指摘に聞こえた。 今秋キャンプで監督の直接指導も受けながら精力的にブルペン入りした門別は紅白戦で自己最速まであと1キロに迫る150キロも計測。指揮官の言う「大きなところをしっかり」の道からは外れていないようには見える。 現役時代に、同じ高卒で伸び悩み、プロの壁にもぶつかった時期も経験している藤川監督の下、虎のトッププロスペクトがどんな成長曲線を描いていくのかも見逃せない。 3:及川雅貴 一気に潜在能力を開花させる可能性を秘めているのが、5年目左腕の及川雅貴だ。秋季練習では藤川監督がキャッチボール中に声をかけて身体の動きに関して助言を送った。 「基礎の基礎。順調にいってる選手には声をかける必要はない。横の動きが強いと、対左打者にはメリットがあるけど、長くやっていくためにはデメリットになる」 対左打者に対してのワンポイント起用なら強みを発揮する身体の使い方ではあるものの、打者の左右関係なく安定した成績を残していくためには現状打破が必要になる。 ここまでの5年間で先発、中継ぎで起用されてきた。だが、首脳陣は、まだ23歳の及川に「ユーティリティー」は求めていない。藤川監督はこうも言った。 「高校生(高卒入団)の場合は早くにデビューして基礎の時間を少し置いてしまう。プロで生き抜く本物の強さというのを見つける期間をちゃんと取らないと選手寿命は短くなってしまう」 早くに1軍デビューをしたことで、まだ“土台”となる部分が築けていない。指揮官の言う“本物の強さ”を身につける1年で及川はジェネラリストではなく、スペシャリストの道を目指すことになる。 [取材・文:遠藤礼]