「株式の譲渡益」の課税逃れ…「国外転出時課税制度」創設で資産フライトが難しくなった⁉海外でも出国時に課税強化
課税制度に関しては各国でルールが違います。その結果、海外に移住してから株式等を売却することで、課税を免れる輩があらわれました。現在、富裕層の国外への住所移転或いは財産の国外移転に関してすでに多くの国が対策を講じています。日本の場合は「出国税」を設けることで、出国前に課税することで対策しています。本連載では、国際税務の専門家が解説します。 第21回】 都道府県「遺産相続事件率」ランキング…10万世帯当たり事件件数<司法統計年報家事事件編(令和3年度)> 2023.02.07
株式の譲渡益への「課税」を免れる抜け穴があった…
平成27年度税制改正で「国外転出時課税制度」が創設されました。これは、国外に含み益のある株式を持ち出し、株式の譲渡所得の課税のないシンガポールに居住して(日本非居住者)、同じく課税のない香港で譲渡すれば、どこでも課税を受けないということが可能な時期があったことが創設の背景にありました。 これと同様の事案があり、裁判になりましたが、国側が敗訴しました(東京高裁昭和20年2月28日判決)。この事案では、その個人はシンガポール居住者で日本非居住者でした。 香港で株式を譲渡したことにより香港で源泉所得が発生しましたが、香港ではこの株式譲渡益に課税されません。この個人は日本非居住者ですので、香港で生じた所得に課税はされないのです。また、この個人はシンガポール居住者であることから、香港の所得はシンガポールに送金されない限り、シンガポールでは課税されませんでした。 日本の税務当局はこの個人が日本に住所があるとして課税しましたが、上述のとおり裁判では敗訴しました。この個人は日本、香港、シンガポールのいずれでも課税されないことになったのです。
国外転出時課税制度で課税逃れは不可能に
国外転出時課税制度は、このように株式等の値上がり益(未実現利益)を国外で譲渡して、日本の課税を逃れることを防止するために「出国時」という水際で課税する制度です。 世界各国は、富裕層の国外への住所移転、あるいは財産の国外移転に関して、すでに多くの国が対策を講じています。 出国に係る課税の特例を導入している国は主に以下の国々が挙げられます。 オーストラリア、オーストリア、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、ニュージーランド、ノルウェー、オランダ、スペイン、スウェーデン、英国、米国
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