宮沢氏、中国民主化に懐疑的 日米首脳会談、「最恵国」は継続論 93年外交文書公開
外務省は26日、1993年の外交文書ファイル11冊を公開した。 それによると、同年4月の日米首脳会談で宮沢喜一首相がクリントン大統領から中国の将来像に関して見解を問われ、民主化に「懐疑的」とする見方を示していたことが明らかになった。一方で、優遇関税を適用する最恵国待遇については継続を促していた。(肩書は当時) クリントン氏は92年の大統領選で、父ブッシュ政権の対中姿勢を弱腰だと批判。89年の天安門事件を踏まえ、中国への最恵国待遇を続けるには人権状況の改善が必要だという立場を取っていた。 【写真特集】天安門事件(1989年6月4日) 93年4月16日にワシントンで行われた首脳会談で、クリントン氏は「中国についてどのように考えるか」と質問。宮沢氏は「中国経済が発展していけば軍事的野心を発揮する余地は十分ある。生活水準が高まるにつれ民主主義が定着するとの説があるが、自分は懐疑的だ」と答えた。 宮沢氏はまた、「中国は当分脅威ではないが、そうなる可能性を秘めている」と述べた。 この頃、中国は改革開放路線を本格化。西側諸国の向き合い方が焦点となる中、経済発展が民主化につながるとする期待論も広がった。宮沢氏の発言はこれを否定し、現在に至る中国の行動をある程度「予言」したと言える。 ただ、最恵国待遇についてはクリントン氏に対し、「無条件供与に賛成だ。香港の発展にとっても重要だ」と語った。 結局、クリントン政権は93年5月に最恵国待遇を条件付きで1年間延長。翌年には無条件で更新した。 米国の対中最恵国待遇を巡っては、93年7月の東京サミット(先進国首脳会議)の際に行われた日米首脳会談で議論になり、宮沢氏が継続論を唱えたことが分かっている。2005年に刊行された同氏の回顧録によれば、「世界のどこでもやっている」と語ったという。 外務省は原則として作成から30年が経過した外交文書を定期的に公開。東京・麻布台の外交史料館で閲覧できる。