「人間以上に賢いAI、早ければ5年後」「AIの脅威は単なるSFではない」…ノーベル物理学賞・ヒントン名誉教授が語る未来
人工知能(AI)研究の第一人者として知られ、2024年のノーベル物理学賞受賞が決まったカナダ・トロント大のジェフリー・ヒントン名誉教授が読売新聞のインタビューに答えた。主なやり取りは次の通り。
「非常にうれしい。自分が取り組んできたテーマでの受賞なのでなおさらだ。もともとAIを開発した中心人物の一人だとみなされてきたが、さらに信頼を得た。AIの危険性についての発信がしやすくなったし、懸念を表明する場に招かれる機会も増えた」
――AIの危険性をどう考えるか。
「長年の研究の結果、AIのようなデジタルインテリジェンスは、より優れた知性だと考えるようになった。だからこそ、AIが人類を超える知性を持ち、私たちを支配する可能性についてそれを望むかどうか、真剣に考える必要がある。その脅威は単なるサイエンスフィクションではない」
――AIの能力は人間を超えるか。
「一人の人間は20億~25億秒程度しか生きられない。その時間では、インターネット全体の情報を学ぶことはできない。1000個のAIがあれば、それぞれが別の情報を学習し、共有することで、すべてを学ぶことができる。チャットGPTは人間の何千倍もの知識を持っている」
――チャットGPTの公開から2年ほどがたった。AIの進化をどうみているか。
「(チャットGPTの公開は)間違いなく大きなマイルストーンだった。グーグルでも似たような技術を開発していたが、公開されなかった。マイクロソフトもかつて対話型AIを公開したが、ヘイトスピーチを発信し始めたため、非公開となった。
だが、オープンAIは、少ない量の学習でAIの行動が調整できることを示した。この数年でAIの進化が速くなっていることに間違いはない。だれもが予想しなかった。かつては、人間を超える能力を持った知能が登場するのは、50年、100年先だと思っていたが、今では50%以上の確率で20年以内に、人間と同等かそれ以上に賢いAIが生まれるだろう。早ければ5年後かもしれない」