「人間以上に賢いAI、早ければ5年後」「AIの脅威は単なるSFではない」…ノーベル物理学賞・ヒントン名誉教授が語る未来
「コールセンターの顧客サービスは劇的に改善するはずだ。膨大な知識を持つAIが対応することで、同じ質問を繰り返し聞くようなことはなくなるだろう。医療分野でも驚くほどの効果が期待できる。1億人の患者を診察したAI医師に診てもらうことができる。珍しい病気にかかっても、医師には診察した経験がある。新薬の設計にも役立つだろう。自動運転の車も、人間よりも安全に運転できるはずだ。こうした利点がある以上、AIの開発が止まることはないだろう」
――負の影響は。
「偽情報や誤情報、陰謀論が拡散し、有権者の投票行動を操作することが考えられる。すでに民主主義は脅かされている。AIが高度になるにつれ、世論操作が容易になる。フィッシング詐欺やサイバー攻撃も急増するだろう。AIを使ってウイルスを合成することも可能になるかもしれない。非常に心配だ」
――雇用への影響は。
「AIによる生産性の向上は富裕層に利益をもたらす一方、労働者は貧しくなる恐れがある。産業革命では肉体労働が減ったが、ほかの仕事が生まれた。今回は日常的な知的労働がAIによって置き換えられる。新しい仕事が生まれるかどうか、明確ではない。生み出すよりも奪う仕事の方がはるかに多いとみている」
――人間にしかない能力は何か。
「人間が持っている能力で、AIにできないものはない。AIは私たちが持つどんな特性でも再現できるはずだ」
――AI開発をどう進めるべきか。
「市場原理にすべてを任せるという考えは、ばかげている。見えざる手が私たちを守ってくれるという考えはナンセンスだ。AIは危険な薬で、米国を始め、政府は大企業が安全性の研究にもっと多くのリソースを割くよう強制すべきだ」
――国際協調で開発を制限できないか。
「人類を支配することを防ぐ安全研究では各国が協力できるかもしれない。冷戦時代には、米ソが地球規模の核戦争を防ぐために協力した。だが、兵器開発やサイバー攻撃といった分野では相手と戦うために技術開発を行っており、協力することはないだろう」