「人間以上に賢いAI、早ければ5年後」「AIの脅威は単なるSFではない」…ノーベル物理学賞・ヒントン名誉教授が語る未来
――トランプ次期大統領の下、AI開発はどう進むか。
「安全に開発するのが困難になると思う。トランプ氏はAI企業に対し、自分たちが望むルールを作ることを認める姿勢を示している。彼に資金を提供すれば、容認されるということで、規制が売り物のようになっている。その結果、気候変動を止めることやAIを安全に開発することは難しくなるだろう。側近のマスク氏も自らがAI開発企業を率いており、トランプ氏に安全規制を撤廃するよう助言するのではないか」
中国が米国を超える可能性は
――中国がAI開発で世界一になる可能性は。
「10年以内に米国を追い越す可能性は高いだろう。米国は関連技術のアクセスを制限することで、中国の開発を遅らせようとしているが、数年間の遅延をもたらすだけだ。その結果、中国国内に独自の市場が生まれ、自力で技術を作る方法を学ぶと思う。米国よりも多くの資金を投入し、人材も育成するだろう。技術の開発は長い目でみれば、民主的な制度が強い国が成功する傾向にあるが、トランプ氏の再選でその基盤を失いつつある」
――日本の開発の現状をどうみるか。
「1980年代初頭、日本は世界のリーダーだった。当時の米国人は日本を恐れていた。日本の産業システムの方が米国より優れているのではないかと考えていた。なぜかわからないが、現実にはならなかった。だが、日本に優れた研究者がいることは間違いない。日本は高齢者が多い。敬意を持って高齢者の世話をするロボットには需要があるはずだ。ロボットは日本が優位性を発揮できる分野の一つではないかと思う」
(カナダ・トロント 小林泰裕)