ホンダの全固体電池パイロット工場を見学! 開発の最前線で感じた量産までの距離感
ライバルに対して一歩リード?
さる2024年11月21日、ホンダが全固体電池のパイロットプラントを2025年1月から稼働させると発表しました。 【写真】ホンダが開設した全固体電池のパイロットプラントの、詳細な様子を見る(10枚) その場所は栃木県さくら市。レース好きの方ならピンとくるでしょう、ホンダ・レーシング(HRC)の本拠の一角に、延べ床面積にして2万7400m2の工場を建設したといいます。面積ベースでいえば、おなじみ東京ドーム換算で約0.6個ぶん。もはや立派なプラントの広さです。これまで見てきたトヨタや日産の全固体電池の研究施設とは、スケールが全然違います。 もっとも、短期中期的な技術開発にまつわる戦力開示は、情報戦の一面もありますから、規模だけの比較はあまり意味をなさないかもしれません。いっぽうで、このタイミングでこの規模の実証プラントを報道陣にさらして動かすというホンダの本気が、他社にとってなんらかのプレッシャーとなることも想像に難くありません。 ちなみにこのパイロットプラントへの投資額は約430億円と発表されていますが、そのうちの4割以上はNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のグリーンイノベーション基金から出資されています。すなわち、ここでの全固体電池の製造技術確立にまつわるノウハウの一部は、NEDOを通じて日本の共有資産として運用されます。今や電池は経済安保上の戦略物資ゆえ、こういうかたちも採られるわけですね。またこの大きなパイロットプラントには、さまざまな会社の工機や設備などが詰め込まれているのですが、おのおのに社名は記されていません。公共性が求められる事業のため、表からは見えないようにマスキングしているそうです。
「Honda 0」にも全固体電池が積まれるかも
ところで、ホンダはこのプラントを、生産技術の確立後も量産ラインへと切り替えるつもりはないといいます。継続的な進化のためにいろいろなトライを繰り返す研究開発の拠点とし、その成果を別途用意する量産ラインへ転用するというのが描かれたシナリオです。そのうえでも設備の規模感が製造工場と同等という点が、ノウハウのスライドを素早く実現するうえで重要だということでした。 ホンダでは約15年前から全固体電池の研究を開始し、4年前にはこのパイロットプラントの構想が浮かんでいたといいます。全固体電池はエネルギー密度の高さや性能安定度、温度耐性、大電力の出し入れなどの点で、液体系電池に対する明確な優位があり、このパイロットプラントで2020年代後半の製造を目指す全固体電池については、同等性能のリチウムイオン電池に対して、体積で50%、重量で35%、コストで25%の低減を目指しているといいます。 ただし、従来のリチウムイオン電池がいきなり全固体に置き換わるという話ではなく、そちらの投資回収やコスト低減なども進めながら、適材適所で配していくというロードマップが描かれているようです。いっぽうで、具体的な車種への言及はなかったものの、今後のアーキテクチャーへの全固体電池の搭載は想定しているということで、たとえば「Honda 0」シリーズでの展開も考えられるかもしれません。