感染症が流行中も…不必要な抗菌薬は薬剤耐性菌の発生を助長する【クスリ社会を正しく暮らす】
【クスリ社会を正しく暮らす】 寒い季節となり、呼吸器の感染症が広がってきています。インフルエンザ、新型コロナ感染症に加え、今年はマイコプラズマ感染症も流行しています。 コロナ禍で一気に広まった「解熱鎮痛薬」に追加された重大な副作用 一方では、多くの感染症に用いるペニシリン系やセフェム系などの抗菌薬(抗生物質)がかなり不足している状況です。医師も抗菌薬が必要ない患者さんに対しては処方をしませんし、薬剤師も入手可能な抗菌薬への変更を医師にお願いしたり、現場はかなり大変な状況が続いています。 このような中、風邪で受診された際、患者側から抗菌薬を希望されるケースがあると聞きます。風邪は、ほとんどがライノウイルスなどのウイルス性疾患です。抗菌薬は、細菌に対しては効果があるのですが、ウイルスには効果がありません。ですので多くの場合、風邪には抗菌薬は不要です。 インフルエンザや新型コロナ感染症もウイルス性疾患で、細菌が原因ではないため、抗ウイルス薬が処方されます。抗菌薬は必要時に医師が処方することもありますが、軽症の場合は処方されないケースがほとんどです。ちなみに、現在流行しているマイコプラズマ感染症には、ペニシリン系やセフェム系などの抗菌薬は無効です。マクロライド系抗菌薬が第1選択薬となります。 不必要な抗菌薬の使用は薬剤耐性菌の発生を助長します。欧州など薬剤耐性菌の発生率が低い国では、診察時に「風邪なの? だったら抗菌薬出さないでね、ドクター」と患者側から訴えられるケースもあると聞きます。これらの国々では、一般市民の抗生物質に対するリテラシーが高いのです。 しかし、日本では一般の方々の抗菌薬に対するリテラシーが決して高いとは言えません。今後は学校教育などでも、薬剤耐性菌の問題などについて学ぶ機会が必要ではないでしょうか。 (荒川隆之/薬剤師)