19歳で夢のバス運転士デビュー…道交法改正で大型2種免取得可能に、人手不足対策の切り札期待
茨城県内最年少となる19歳のバス運転士がデビューした。東京都出身で茨城交通(水戸市)に勤める高阿田(たかあた)諒太さん(19)。バスの運転に憧れて昨春入社し、研修を経て今年11月から運転士として独り立ちした。公共交通を担う運転士不足が深刻化する中、10歳代の担い手が現れたことに期待が寄せられている。(吉村悠)
高阿田さんは子どもの頃からバスが好きで、バスの運転士を志した。都内の工業高校に通う中で進路を考えていると、茨城交通の「運転士養成員」制度に目が留まった。高卒で入社後は事務員として働き、運転士に必要な大型2種免許の取得を目指すもので、教習受講などの費用は社が全額負担する仕組みだ。
大型2種免許の取得は従来、21歳以上で普通免許取得から3年経過していることが条件だった。それが2022年の道路交通法改正で、特例教習を修了すれば、19歳以上で普通免許取得から1年で資格を得られるようになった。高阿田さんは7月から特例教習に通い、9月に無事に免許を取得。「夢がかなってうれしい。いずれ高速や貸し切りバスを運転してみたい」と意気込んでいる。
10歳代の運転士誕生がバス業界の苦境を打開する起爆剤となるか――。
県バス協会によると、19年度に2481人いた県内の路線バスの運転士は22年度には2184人まで減少。運転士の労働時間の規制が強化された「2024年問題」もあり、コロナ禍以降、バス需要が回復しても、各社は必要な人員を確保できず減便せざるを得ない状況にあるという。賃金が比較的低いことなどが影響しているとみられる。それだけに、担当者は今回の明るい話題に「これをきっかけに若い方が業界に入ってきてくれればうれしい」と期待を寄せる。
茨城交通では、中途採用者の免許取得費用補助や定年引き上げなどを行ってきたが、高齢化が進み、運転士の7割が50歳代以上となっている。路線バス網維持のためには若い人材の確保が急務となり、15年に運転士養成員制度を開始。高阿田さんのほか8人が、これを利用して運転士となっているという。山内隆之人事担当課長は「この取り組みを続け、茨城の公共交通を支え続けることが使命だ」と話している。