西武の契約更改はなぜ揉める? 配置転換にメジャー志願、背番号も…直訴続々
主軸打者の相次ぐFAでの流出で“投高打低”の傾向が定着
「まず西武の投手陣は、個性的で自己主張の強いタイプが多い。しかも西武では近年、浅村栄斗内野手(楽天)、秋山翔吾外野手(広島)、森友哉捕手(オリックス)、山川穂高内野手(ソフトバンク)ら主軸打者が、次々とFAで流出し、めっきり“投高打低”の傾向が定着。せめて投手陣にはなるべく思い通り、気持ちよく働かせたいという球団側の思惑が、契約更改でモノを言える空気を醸成しているのではないでしょうか。そうでなくても、西武は資金力が決して潤沢でなく、本拠地球場の夏の蒸し暑さ、都会から遠いロケーションが、選手にとってマイナスポイント。球団側にとっては負い目になっています」 こう指摘するのは、スポーツ紙デスクだ。一方で、球団側の契約更改交渉担当者のキャラクターも関係していると見る。 「昨年までの渡辺GMは、自身の現役時代も踏まえて『選手たちの言い分、気持ちもよくわかる』と口にしていました。2年前に平良が保留した時には、『“大爆発”というのは、あんなものではない。俺の現役時代はもっとすごかったぞ』と笑っていました。今年から役割を引き継いだ広池浩司・球団副本部長兼編成統括(来年1月1日付で球団本部長に昇格)も『プロですから、交渉の席で自分の言葉でちゃんと交渉できるのは素晴らしいこと』と前向きにとらえているそうです」 また、西武投手陣にメジャー志向の選手が多く、実際にMLB球団から高い評価を受けていることも、契約更改交渉を複雑にしている。この点では、西武OBで、2019年以降メジャーで活躍している菊池雄星投手の影響が色濃い。既にポスティングシステムでのメジャー移籍を球団に要望している平良、高橋の他、今井もメジャー球団のスカウトの評価が高く、その後にも今年の新人王の武内夏暉投手、侍ジャパンの一員として国際試合の経験を積んでいる隅田知一郎投手らが控えている格好だ。
「われわれはライオンズというチームの事情を知っています」
MLB球団関係者が西武投手陣に注目する理由を、こう説明する。 「西武の投手陣は、力量が高いのはもちろん、投球フォーム1つを取っても、個性的な選手が多い。力勝負の傾向が強いパ・リーグで揉まれているので、MLBにもなじみやすいと思います。それに、われわれはライオンズというチームがこれまで、選手のメジャー移籍を積極的に後押ししてきたことを知っています。松坂大輔氏が2006年オフにポスティングシステムでレッドソックスへ移籍した際、ライオンズに支払われた譲渡金でスコアボードの全面カラー化など、本拠地球場の大幅改修が行われた──という話も聞いています」 結局、平良は1回目の交渉の10日後(12月13日)、2回目の交渉でリリーフへの配置転換を飲み、5,000万円ダウンの来季年俸2億円プラス出来高(金額は推定)でサイン。「年俸はダウンですが、出来高で補填する内容をつけてもらいました。その他にも諸々あって、それほど(リリーフを)やってほしいのだなと、球団側の気持ちが伝わりました」と説明した。ただ、「メジャーは個人的に目指している場所で、そこを目指す気持ちがないと、日本でも活躍できないと思っています」とも語り、来年以降へ向けて火種は残った。 今年のペナントレースでは球団史上ワーストタイ記録の91敗を喫し、最下位に沈んだ西武だが、元凶はパ・リーグワースト記録を塗り替えるチーム打率.212、今季12球団ワーストの総得点350に終わった打線。対照的に投手陣は、魅力があふれている。来季以降も契約更改を含め、いろいろな意味でファンをドキドキさせそうだ。 (取材・文/喜多山三幸) デイリー新潮編集部
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