正捕手・甲斐が巨人にFA移籍で大打撃 ソフトバンクが人的補償で狙うのは菅野の女房役か 鬼筆のスポ魂
一人の選手のフリーエージェント(FA)権行使による移籍決定が、リーグの勢力図を根底から塗り替える可能性がある。ソフトバンク・甲斐拓也捕手(32)の巨人へのFA移籍決断はそれほどの衝撃波をホークスのみならず、パ全球団に与えた。 【写真】交流戦の試合前、巨人の阿部慎之助監督と話すソフトバンクの甲斐拓也 ■阿部監督の「10」継承 「ホークスでの全ての経験を思い返すたびに、本当にホークスを離れていいのか、自問自答を繰り返しましたが、今回新たな経験をすることで野球選手としての自分を高めたいという心境に至り、移籍することを決めました」 甲斐は17日、こう表明し、巨人との契約合意を発表した。4年以上の複数年契約で総額10億円以上の大型契約とされ、背番号は阿部慎之助監督(45)が現役時代につけていた「10」に決定した。「新たな司令塔が欲しい」と獲得に乗り出した阿部監督には満願の結果となった。 一方で、今季年俸2億1千万円(推定)からの大幅アップ&複数年契約を提示し、慰留に努めていたソフトバンクにとっては激痛だ。三笠杉彦ゼネラルマネジャー(GM)は「残念。ダメージがないと言ったらウソになる」と言葉を絞り出した。〝甲斐喪失〟後の戦力事情を見れば、ショック度がうかがい知れる。 ■パの勢力図劇変か 甲斐は2014年に1軍初出場を果たし、17年以降の8シーズンは捕手として100試合以上に出場。今季も119試合に出場(スタメンは102試合)し、打率2割5分6厘、5本塁打、43打点をマーク。打率はキャリア2番目の数字で、本塁打は前年の10本から減ったものの二塁打は16本から25本に増えた。 今季の盗塁阻止率2割8分4厘はリーグ5位だったが、〝甲斐キャノン〟と呼ばれる強肩はいまも健在。ゴールデングラブ賞は今季を含めて7度受賞。ベストナインは3度受賞し、21年の東京五輪や昨年のWBCでは侍ジャパンの世界一に貢献した。 当然ながらチーム内の依存度は高い。今季、控えの海野隆司捕手(27)は51試合、昨季は嶺井博希捕手(33)が44試合に出場したが、甲斐に頼りきりの構成だった。正捕手に定着した17年以降、チームは3度のリーグ優勝、4度の日本一に。チームを常勝軍団に導いた支柱が抜けるのだ。ホークスは今季91勝49敗3分けの貯金42で、2位・日本ハムに13・5ゲーム差をつけての独走Vだったが、甲斐を失う来季は様子がガラリと変わるだろう。 「控えの海野との力の差は歴然。投手陣はいいが、経験豊富な甲斐のリードがあればこその面もあった。チームとしての戦い方は確実に不安定になる。甲斐は打撃も今季はガラリと変えて、ヒットを打てる打法になっていた。戦力的に相当痛いはず」と、パ・リーグ他球団首脳は話した。パの他5球団は甲斐の巨人移籍にほくそ笑んでいる…といっても過言ではない。