FACT再結成の舞台裏、パンク/ラウドシーンの再興 REDLINEが次の世代に託すもの
REDLINEは2010年にスタートしたライブツアー企画。初年度はSiM、クリープハイプ、Fear, and Loathing in Las Vegasらが出演。2013年には恵比寿リキッドルームで怒涛の10DAYS開催、2014年にはZepp Tour開催。2019年には10周年を記念して幕張メッセ国際展示場9-11ホールにて「REDLINE ALL THE BEST 2019 ~10th Anniversary~」を開催。ラウドシーン/ロックシーンを中心とした、ライブハウス発のムーブメントを象徴するブランドとして成長を続けてきたが、2020年のコロナ禍で状況が一変する。そして2024年12月、その歴史に幕が下ろされる。主催者のJMS専務取締役・KTR氏にインタビューを実施した。 【写真ギャラリー】過去に開催されたREDLINEイベントのライブ写真 ※この記事は現在発売中の「Rolling Stone Japan vol.28」掲載のインタビューに一部加筆・修正したものです。 14年にわたってREDLINEを仕切ってきたKTR氏は、このイベントを通じてシーンにおける存在感を高め、多くのバンドから信頼を集めるに至っている。今回、REDLINEプロジェクトの終焉にあたって彼の胸の内に迫ったところ、そこにあったのはあくまでもバンドファースト、シーンファーストの熱い姿勢だった。 ・激変した音楽と生活のスタイル ー前回、KTRさんからお話を聞いたのは5年前、2019年12月に幕張メッセで開催された「REDLINE ALL THE BEST 2019」直前のことでした。この5年の間にどんな変化をシーンに感じていますか。 KTR 前回のイベントは10周年で、今回15周年。その間にコロナがあって、ライブのあり方も変わって。目まぐるしかったですね。前回のイベントが終わった1カ月後にコロナが来ちゃうんですよね。で、ライブのキャンセルが続いて、ライブに行かずともサブスクで音楽をキャッチアップできるっていう聴き方になって、CDもさらに売れなくなって、タワレコもどんどん潰れていって。そうやって音楽と生活のスタイルが3年ぐらいかけて変わっていって、1年半前ぐらいからようやく規制が緩和されていったけど、もう180度変わりましたよね。パンクやラウドミュージックのお客さんの数が減って、以前は売り切れてた箱が売り切れなくなったり、北海道なんて行くだけで赤字になっちゃうぐらい動員が厳しくなったりして。ちょっと人が離れていっちゃったような気はしますね。 ーそれはラウドシーンだけの話ですか。 KTR ロックシーン全体がそうかもしれないですね。サブスクで聴くっていう音楽スタイルが台頭して、トップ20を見てもロックバンドは片手で足りるぐらいしかいない。今はサブスクでロックを聴くカルチャーが全くないんですよね。ライブで出会っていいなと思ったバンドの曲をサブスクで聴くとか、実際に現場に行かないとカッコいいバンドに一切出会えなくなったって感じがします。 ーそこはJMSとしても苦労する点ですね。 KTR そうですね。だからといって、無理やりサブスクでヒット曲をつくろうとするとバンドの軸がブレるじゃないですか。それは本末転倒なので、REDLINEというフィルターを通して、現場のカルチャーから新しいバンドをちゃんと繋げていくということで、コロナ禍の間も毎年REDLINEをやっていました。たとえば、2年前の完全な自粛期間中も、企画趣旨に賛同してくれたHEY-SMITH、The BONEZ、SHADOWSの3バンドに新宿ACBに集まってもらって、いつも通り何でもあり、でもマスクはつけなさいよっていうライブをやったんですけど、そこからぴあアリーナMMでのアリーナ公演までひとつのセットとして考えて、アーティストとともに作っていきましたね。 ーACB公演をきっかけに、「REDLINE ALL THE FUTURE」は定期的に開催していましたね。 KTR はい、賛同してくれるバンドだけで集まって、賛同してくるお客さんだけに来てもらう、みたいな。 ーどんな想いからタイトルに「FUTURE」をつけたんですか。 KTR 夜明けを見据えてというか、いつものあの空間はまた帰ってくるぞっていう希望の意味でつけました。 ーそうやっていろいろと模索して、もがいて、活動を続けてきたことでどんなものが見えましたか。 KTR ACBでやったときは、アーティストもお客さんもよっぽど楽しかったのか、終演後にもみんな一切SNSに感想とかをアップしなかったんですよ。どんなライブだったのかリアルな口コミでしか広まらないっていう。SNSに情報が出ていかなかったのはそこがすごくいい空間だったという証拠だと思ったし、そこから1万人規模のアリーナ公演に繋がる希望が見えた一番のアクションでしたね。 ーそうやって「REDLINE ALL THE REVENGE」につながっていったんですね。 KTR そうなんです。当時、アリーナ公演で声出しOKというのはうちのイベントが初めてだったんですよ。まあ、ダイブ・モッシュはOKとまでは言ってないですけど黙認というか。なので、出演アーティストも相当テンションアガってましたね。 ーあの試みは何の勝算もなくいきなりやったわけではなく、それまでの積み重ねがあったから実現したものだったんですね。 KTR そうですね。バンドだけでなく、お客さんにも理解してもらった上で来てもらいました。だから炎上しない。そうやって先陣を切れたのはよかったですね。やっぱり、一発目って怖いじゃないですか。みんなすごく慎重になってた時期だし。そういうギリギリを攻めて、なんとかこなせたのがあの公演でした。 ーちゃんと結果も残せましたしね。 KTR はい、そうですね。1万人ぐらい入れられたし、いろんなルールをお客さんが守ってくれたんで、それはすごくよかったですね。