FACT再結成の舞台裏、パンク/ラウドシーンの再興 REDLINEが次の世代に託すもの
「15周年でやるハコが決まったら一番にオファーするのは絶対にFACTだと決めていた」
ーあれ以降、徐々に様々な規制が緩和されて今に至るわけですが、また新たに積み上げていくぞというタイミングで、REDLINEは12月7日、8日に幕張メッセで開催される大型イベント「REDLINE ALL THE FINAL」をもってファイナルを迎えることになりました。これはなぜですか。 KTR 元々、REDLINEを始めたときから、最低でも10年は続けられるイベントにしようと思っていて。でも、10周年を迎えた1カ月後にコロナが来てしまって、そんな状況でもREDLINEとしての使命があるんじゃないかと思って「REDLINE ALL THE FUTURE」みたいなアザーラインを作ってやっているうちに、「気づけばもう、再来年には15周年だな……」と。そこで一度REDLINEを閉じようと思ったんです。理由としては、これまでイベントを続けてきた中で、僕自身がインプットしないとお客さんに鮮度が高いものを与えられんじゃないかと思ったんです。 ーなるほど。 KTR REDLINEの役割は普通の興行フェスとは全然違って、どちらかというとバンドフェスに近い空気感だし、そういった興行フェスってあんまりないんですよね。そういうフェスをつくるためにインプットも重要なんですよ。あと、それとは別に、さっきも話しましたけど、最近はロックバンドが少なくなってきちゃって、REDLINEに合いそうな新人バンドがいなくなってきたんです。であれば、今回の2DAYSで一旦休みたいなと。 ーそういう想いとともに幕張メッセで最後のイベントを行うわけですね。どんなことを意識してバンドに声をかけましたか。 KTR REDLINEの歴史、イコール僕の音楽人生の歴史でもあるので、自分の音楽人生を紐解きながらオファーしていきました。あと、これまでにREDLINEとしてオファーしてきたけどスケジュールの関係とかで出演が叶わなかったアーティストが数多くいるんですよ。今回が初出演になるアーティストで、今回どうしても誘いたいということでお願いして実現しました。 ー世間的には初めての絡みに見えるかもしれないけど、KTRさんとしてはそうではないと。でも、どのバンドに声をかけるかかなり悩みませんでしたか。 KTR めっちゃ悩みました。まず、バンドの数的に5ステージ作ることは決めてたんですけど、2019年が23バンドだったので、今回は2日間で46バンド、っていうのがやりやすいということは経験上わかっていたんですね。そこから減らしてもダメだし、増やしてもダメ。そういうつもりでタイムテーブルを組んでたんですけど、どうしても増えちゃうんですよね。その結果、1日5組ずつ増えました。フルマラソンをお客さんと一緒に走ってもらうような2デイズになりますね。 ーでも、これだけのメンツがよく集まりましたよ。 KTR そこは本当に感謝ですね。第一弾発表の9月25日にはまだ解禁できないバンドがいて(※取材は8月末に行われた)、それが今回一番のトピックなんですよ。このアーティストを口説くのに2年かかりました。出演発表は10月末になるんですけど、このアーティストの解禁には非常に大きいものがあって。この場だから言いますけど、FACTが「REDLINE ALL THE FINAL」で再結成するんです。 ―ええ~!! それはすごいですね! KTR シーン的にもかなりデカい話だと思います。そもそも彼らは活動休止ではなくて、解散で終わってるんですよ。でも、2022年から僕が動き出して、やる、やらない、やる、やらない……を繰り返した末、今年3月に出演が決まったんです。僕がメンバー一人ひとりと話をして、というのがずっと続くという。たとえば、メンバーのAdam(Gt&Vo)はLA在住なので、なかなかほかのメンバーと時間が合わなくてコミュニケーションがとれなくて、それもすごく大変でしたね。ほかにも、SHADOWS(Hiro:Vo、Kazuki:Gt&Vo、Takahiro:Gt&Vo)とかKen Yokoyama(Eiji:Dr)もそれぞれ忙しいので、どのタイミングで顔合わせするのかとか、そういうセッティングだけでも相当なカロリーがありました。 ―想像するだけで胃が痛くなりますね……。 KTR メンバーも最初はやる気がなかったし、「別に俺はやんなくてもいいけど、お前が言うなら話は聞くよ」みたいなスタンスだったので、 俺が諦めてしまったらシンプルに終わる話だったんですよ。「あ、別に大丈夫です。名残り惜しくはないんで」みたいな。でも、やる気が出てくるまでは大変でしたけど、今は「やろうぜ! 楽しみになってきたね!」みたいな雰囲気になってきて、バンドがひとつになってます。最近は月1でリハに入ってるんですけど、それを見ているだけでもすごく楽しいし、みんなあの頃を思い出したかのようにきめ細やかな練習をしてますね。本当に4、5時間、休みなく練習してるんで。 ―KTRさんは完全にマネージメントの動きになってるんですね。 今だけはなってますね。当時、FACTはavex managementに所属していて、avex内のmaximum10というレーベルからリリースしていたんですけど、今の状況としてはインディーズなるんですよね。 ―そもそも、どういう流れでKTRさんはFACTと出会い、今回再び彼らにアプローチし始めたんですか? 最初は、avexとJMSが一緒になってFACTをインディーズっぽく売ろうということで、ガチガチのメジャーから出すのではなく、インディペンデントなストリートのフィルターを通して、能面をかぶったりしてカジュアルに面白いことをやろうということになっていたんです。で、僕も流通とプロモーションを担当して、最初からチームの一員として関わらせてもらってたんですよ。 ―そういう関わりがあったんですね。 そして、解散してから10年が経って、SHADOWSとはずっと交流があったんですけど、ほかの方は仕事をしていたり、LAに帰っていたりして、なかなか接点がなかったんですね。でも、自分は3年前ぐらいから15周年のタイミングでREDLINEをやめると決めていたので、15周年でやるハコが決まったら一番にオファーするのは絶対にFACTって決めてたんです。それくらい強い想いをもって、メンバー一人ひとりにオファーしました。個別にお会いして、茨城に行って、千葉に行って、直接出向けない場合はリモートで何度も話したり、そういうことを半年間ぐらい続けて、「じゃあ、1回会おうか」となったのが最初に動き始めてから1年が経った頃。 ―1年かけてやっと会うところまで漕ぎつけたんですね。 しかも、会うだけですよ(笑)。やるなんて決まってないし、嫌だったら「やんねえよ」で終わりです。でも、こっちは1年も時間と労力かけてきたし、絶対負けらんないなと思って、そこからはもう、「やろうぜやろうぜ!」ってスタジオに入る日を無理やり決めちゃったりして。LAに住んでるアダムにも、「もう、エア押さえといたんで! 休みだけ取ってください」って。 ―そこまで強引に(笑)。 彼も向こうで仕事をしているんですけど、こっちの情熱が伝わったのか、「うん、わかった」みたいな感じで、それで全員が集まってスタジオでセッションすることになったのが去年の8月でした。 ―すごい……。じゃあ、今回の裏テーマはFACTですか? それもありますけど、僕は今回のイベントを通じてパンク/ラウドシーンの再建をしたいんです。もう一回、あのシーンを作りたい。 ーどんな2日間にしたいですか。 KTR 2日間でひとつのストーリーになるというか、1日目はギターロックのアーティストが多くて、2日目はパンク/ラウドに振り切って。そうすることでギターロックファンにもパンク/ラウドの世界を味わってほしいし、パンク/ラウドを好きな人でギターロックはそんなに通ってないという人にも1日目に来てほしい。そうやってそれぞれの楽しみ方をしてほしいので、2日間通しで参加することを推奨します。1日だけだともったいないっていうぐらいのジューシーさはあります。