ウクライナ支援 「日本は主体的取り組みを」 前駐キーウ大使・松田邦紀氏
日本が果たす役割とは
各国が戦争終結に向けて取り組みを続ける中で、松田氏は日本が大きな役割を果たしていると強調する。一例として挙げるのが、ウクライナのゼレンスキー大統領が発表した「勝利計画」と「平和フォーミュラ(公式)」への日本のコミットだ。 5項目からなる「勝利計画」は、北大西洋条約機構(NATO)への加盟に向けた正式な手続きなどを含み、今年10月に公表された。「勝利の計画」が侵略戦争終結のための方法論であるのに対し、「平和フォーミュラ」は「核の安全」「食料安保」「エネルギー安保」「ウクライナ領土の一体性回復」など10項目にわたり、「和平の最低条件」と位置付けている。 <ウクライナ情勢を巡る日本の動き> 2022年2月 ロシア軍がウクライナに侵攻開始 2023年3月 岸田文雄首相(当時)がキーウを電撃訪問、ゼレンスキー大統領と会談 2023年5月 ゼレンスキー氏がG7広島サミットに出席 2024年2月 都内で日ウクライナ経済復興推進会議を開催 2024年6月 岸田氏とゼレンスキー氏が長期的支援を明記した合意文書に署名 2024年6月 スイスで平和サミット開催 ゼレンスキー氏は2023年5月、広島で開催された先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)に参加し、G7、グローバルサウス(南半球を中心とする新興・途上国)の首脳と4項目の合意に達した。「この『広島スピリット』が平和フォーミュラを動かしていくための着想になった。広島サミット後から各国政府の関係者が議論を重ね、今年6月にスイスで開催された平和サミットにつながった」と振り返る松田氏は、成果を実現させるための仕組み、手段を示すものとして「勝利の計画」に結実したとみる。 一方、「非武器」に限定される日本の支援は、これまでに120億ドルを超えながら、欧米諸国による軍事的供与に比べ目立ちにくい。殺傷能力のある武器の提供は「防衛装備移転3原則」によって認められておらず、日本は防弾チョッキ、偵察用ドローン、高機動車などをウクライナに提供してきた。松田氏は地雷除去やエネルギー支援、財政支援などを例に挙げ、「日本ができること、日本だからこそするべきこと、日本しかできないことを常に考え、ウクライナを支援してきた。現在はウクライナが自立して自らの経済を回せるように民間の活力を生かし、復旧、復興、戦後の経済発展も見据えた段階に移行している」と語る。