落下前に発見された小惑星「2024 BX1」は珍しい「オーブライト」タイプの隕石と判明
小惑星「2024 BX1」は、発見後に地球に落下した非常に珍しい小惑星です。2024 BX1の一部は大気圏で燃え尽きずに隕石として地表に到達したと推定されており、実際に落下から約5日後にそれと思われる破片が見つかりました。 今日の宇宙画像 今回フンボルト博物館などの調査チームは、隕石と思われる破片が「オーブライト(Aubrite)」と呼ばれる珍しいタイプに属するという分析結果をまとめ、国際隕石学会に報告しました。報告が認められれば、これは小惑星として事前に発見された後に破片が採集された史上4例目の出来事となります。
■落下前に発見された珍しい小惑星「2024 BX1」
太陽系には惑星でも衛星でもない「小惑星」が無数に存在します。その一部は地球へと落下し、明るい流星である「火球」として観測されます。もしも大気圏で燃え尽きず、地表で破片が見つかると、それは「隕石」と呼ばれます。つまり同じ天体であっても、宇宙空間で見つかれば小惑星、大気圏落下中は火球、地表で見つかったものは隕石と、それぞれ異なる分類分けがされており、管轄する機関や付けられる名前も異なります。 2024年1月20日に発見された小惑星「2024 BX1」は、発見から2時間45分後に地球へと落下しました。小惑星が地球への落下前に発見されることは非常に珍しく、2024 BX1は観測史上8例目の事例です。 2024 BX1は落下前にドイツのベルリン西部にあるネウハウゼン(Nennhausen)周辺に落下することが予測されました。観測回数の多さと、ほぼ垂直に落下するという落下角度から、その範囲は事前にかなり狭い範囲に絞り込まれていました。そして落下から5日後の1月26日、リベック村(village of Ribbeck)にて隕石と思われる破片が採集されました。
■2024 BX1由来の隕石は珍しい「オーブライト」と判明
2024 BX1の破片と思われる隕石には珍しい特徴があります。大気圏に突入した際の熱で高温に加熱されるため、隕石の表面には融けた後に固まった「溶融被膜」が見られます。通常の溶融被膜は黒っぽく不透明な色をしており、これが隕石かどうかを見分ける1つの指標となります。しかし、2024 BX1由来の隕石と思われる破片は溶融被膜が半透明で、岩石の組織が透けて見えるほどです。 フンボルト博物館などによる分析の結果、この隕石は「オーブライト」という珍しいタイプの隕石に分類されることが分かりました。オーブライトは頑火輝石(Enstatite)というマグネシウムに富む鉱物を主成分とする隕石で、マグネシウムが多くて鉄が少ないという特徴を持ちます。通常の隕石は鉄の含有量が比較的多く、溶融被膜の中で鉄が酸化されることで黒っぽく見える原因となります。2024 BX1に由来する隕石の半透明な溶融被膜は、鉄の含有量が少ないことと一致します。 オーブライトはかなり珍しい隕石であり、一見すると角の多い礫で構成された角礫岩や、白っぽい花崗岩のようにも見えます。溶融被膜に色がないことも合わせて、遠目から見ると隕石のようには見えません。もしも落下の予測や目撃情報が無ければ、今回の隕石も見逃されたかもしれません。実際、7万個以上発見されていると言われている隕石の中で、オーブライトに分類される隕石は81個、そのうち落下が目撃されたのは11個しかありません。