海外で豆腐人気上昇 欧米向け輸出6年で5倍 国産大豆にニーズ
海外で豆腐の人気が急上昇している。世界的なビーガン(完全菜食主義者)人口の増加を受けて、欧米向けを中心に輸出が好調。2023年の輸出金額は、英国や米国が17年比で5倍まで拡大した。非遺伝子組み換え(NON―GMO)の国産大豆のニーズは底堅く、メーカーが輸出用豆腐工場を新設するなど商機が広がっている。 【データで見る】世界の豆腐市場は拡大が続く 財務省の貿易統計によると、23年の豆腐の輸出金額は6億6999万円で、17年比で2倍と急拡大した。24年(1~3月)も23年を上回るペースで推移しており、好調が続く。 欧米を中心に輸出が伸びている。国別にみると、英国が17年比386%増の1億3861億円、米国が同377%増の5041万円、フランスが同519%増の2972万円と急伸。新型コロナウイルス下の内食化で需要が定着した香港が、同351%増の2億9544万円となった。
保存期間を長く
欧州向けでシェアを高めているのが、大手豆腐メーカー・さとの雪食品(徳島県鳴門市)だ。常温輸送が可能な「無菌充填(じゅうてん)豆腐」を手がける数少ないメーカーで、英国などを中心に数量を拡大。23年度は前年度比13%増の約330万パックを海外に売り込んだ。 主力商品は国産大豆100%の「SILKEN TOFU(絹とうふ)」。常温保存で賞味期限が365日と長く、現地でも輸送や保管がしやすいとして人気だ。輸出開始当初の03年は日本食レストラン向けが中心だったが、近年はスーパーの引き合いも強い。即食性の高さで支持を集めており、「サラダのトッピングなどでも人気」(営業推進室)と消費の幅を広げている。
輸出へ工場新設
輸出拡大へ、工場を新設する動きも出ている。豆腐類を輸出する商社を子会社に持ち、豆腐の製造も手がけるミナミ産業(三重県四日市市)は23年度、同市内に新工場を設立。今年度からの稼働を見込み、欧州や香港へ国産大豆を使った豆腐の輸出を目指す。 同社の南川勤社長は「植物性タンパク質を手軽に摂取できる豆腐類にチャンスがある。欧州ではNON―GMOの規制が厳しく、国産大豆のニーズは底堅い」と商機をみる。一方で、常温保存が可能な無菌充填豆腐の製造ラインを持つ国内メーカーは限られている。豆腐製造機械メーカーとして発足した同社の強みを生かし、「率先して輸出を進めていきたい」と力を込める。
市場今後も拡大
世界の豆腐市場は急拡大が続く見込みだ。インドの調査会社・モルドールインテリジェンスによると、17年の市場規模は9・3億米ドルで、24年は8割増の16・6億米ドル(約2500億円)を見込む。ビーガン人口の増加や、食肉生産による温室効果ガス発生量の削減を目指す動きが加速するとして、29年度には29・4億米ドル(約4500億円)まで拡大するとみる。(鈴木雄太)
日本農業新聞