25人死傷の中国職業学校切りつけ、遺書に「自らの死で労働法を改善する」…SNSで波紋広がる
【上海=田村美穂、北京=川瀬大介】中国江蘇省無錫市の職業教育を行っている学校で16日夜、元学生の男(21)が付近にいた人を刃物で切りつけ、8人が死亡、17人が負傷した。事件は習近平(シージンピン)国家主席が治安対策の強化を指示した直後に発生し、当局は危機感を募らせているとみられる。 【写真】中国広東省では35人が死亡した車の暴走事件が発生したばかり
地元当局の発表によると、男はその場で取り押さえられた。捜査では、男が今年の卒業前の試験に失敗し、就職で必要になる卒業証書を受け取れなかったほか、実習先での待遇に不満を募らせていたことが明らかになったという。
香港有力紙・明報は17日、男が書いたとみられる遺書がインターネット上で確認されたと報じた。遺書には16日の日付が記され、長時間労働や賃金未払いのあった工場や学校への不満とともに、「自らの死で労働法を改善する」との主張が書かれていた。在上海日本総領事館によると、被害者に日本人はいなかった。
中国では今年、公共の場で住民が無差別に襲われる事件が相次いでいる。
11日夜には広東省珠海市で男(62)が車を暴走させ、35人が死亡する事件があった。習氏は「極端な事件を防ぎ、人民大衆の生命の安全と社会の安定を全力で確保しなければならない」と関係部門に指示を出していた。
直後に発生した16日の無錫での事件では、発生直後にネット上で広まった学校の敷地内で血を流して倒れる人の写真や動画がすぐに削除された。中国メディアの報道は当局発表の引用がほとんどで、社会不安が広がらないよう情報統制を徹底している。
相次ぐ事件では、子どもや日本人を含む外国人が犠牲になるケースが目立っているが、中国外務省は「中国は世界で最も安全」(報道官)との主張を繰り返している。だが、SNS上では「また発生したのか」という不安の声のほか、収入格差の拡大や経済低迷などを改善しない限り、事件は増えていくといった指摘が出ている。