立花家の子孫は料亭旅館を経営、徳山毛利家の子孫はYouTubeで歴史を発信……「名家」をどう次代へ受け継げばよいのか
前編記事『蚊取り線香の上山家、菊正宗酒造の嘉納家、鍋島藩の御用窯だった中里家……名家それぞれの「家訓」と「挑戦」』より続く。 【一覧】あなたの県は…?全国47都道府県の「名家」(西日本編)
コロナ禍はかすり傷
立花家18代の立花千月香氏(53歳)は、東京での商社勤め、ボストン留学を経て料亭旅館「柳川藩主立花邸 御花」に入社し、'15年から代表取締役社長を務める。御花は、日本で唯一の「泊まれる国指定名勝」だという。 「宗茂は戦国大名としては唯一、関ヶ原の戦いで負けたのに同じ柳川の領地に返り咲きました。なので、柳川とは切っても切れない縁があるんです。 家訓とまではいきませんが、宗茂の言葉に『領民の幸せこそ第一の義とせよ』という言葉があります。もちろん、『立花家が柳川を守る』とか大それたことは思っていません。この地が大好きというだけです」 コロナ禍中、旅館業は大変な目に遭った。だが、古くから御花を知る地元の人から、「コロナ禍くらいで負けたらご先祖様に申し訳ない」と言われた。戦国時代や明治維新、終戦後に比べれば、今の苦境はかすり傷のように大したことがないと励まされたという。 「堀割(水路)が道路などで埋め立てられることなく、今なお残っていて景色が変わっていない。歴史的建築物に宿泊できるなんてとても珍しいと、連泊する方も増えています。コロナ禍を機に、SNSなどで御花の正しい価値を積極的に発信するようになったことも大きいかもしれません。 御花という屋敷はもともと家族の自宅としてつくられたところなので、特に小さなお子さんに文化財を走り回って楽しんでもらいたい。家族の思い出の場所になるというのが、私の目指しているところ。そして誰かの永遠の心の拠り所になったらいいな」 現在、40年ほど前に建てられたという宿泊施設をリニューアルしている。25年1月11日からオープンする予定だ。 旅館を経営する戦国武将の子孫もいれば、会社を経営するかたわら、YouTubeで歴史情報を発信する子孫もいる。 豊臣秀吉政権の五大老のひとり・毛利輝元の次男である就隆が徳山藩を立てて以来、隆盛を極めた徳山毛利家。その第14代当主の毛利就慶氏(52歳)である。
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