犬猫「殺処分ゼロ」 その裏に隠されたボランティアらの苦悩や模索
SNSや動画サイトで人気のコンテンツといえば、なんといっても犬や猫。かわいらしい姿をつい見てしまうという人も多いのではないでしょうか。 しかし、最初はかわいいと思って飼い始めても面倒が見きれなくなったり、思った以上に子どもが生まれたりして手放してしまう例は後を絶ちません。捨て犬や捨て猫の多くは、自治体の動物愛護センターなどで保護され、新しい飼い主に引き取られますが、飼い主が見つからなければいずれ殺処分されてしまいます。 2013年に動物愛護法が改正され、殺処分をできる限り減らして最終的には「ゼロ」にする目標が盛り込まれました。そして自治体が取り組みを強化した結果、2007年度に犬猫あわせて30万頭近かった殺処分が、17年度には約4万3000頭にまで減少しています。 ところが、「殺処分ゼロ」の裏には、それぞれの自治体やボランティアらの苦悩と模索があります。動物愛護週間(9月20~26日)に合わせ、その実態から今後を考えてみましょう。
飼いにくい犬をあえて引き取る
名古屋市動物愛護センター(名古屋市千種区)に、生後10カ月ほどのメス犬が保護されてきました。夏の暑い日、公園の遊具の手すりに、ひもでつながれたまま捨てられていたそうです。 おとなしい性格で、あまりほえず、くるくるしたつやのある黒い毛が愛らしい雑種犬ですが、「すでに体重が14キロもあるので集合住宅では飼いづらいでしょう。トイレのしつけもまだ不十分で、ふんを踏みつけたり、トイレシートをかんで引っ張り出してしまうくせもあります」とセンターの職員は明かします。 こんな飼い主が見つかりにくそうな犬を、あえて引き取っていったのが鈴木嘉之さん。センターから犬を譲り受け、世話をしながら次の飼い主を探す「譲渡ボランティア」の一人です。犬の訓練士やペットの専門学校の講師を務めていましたが、7年ほど前から犬のトリミングサロンを経営しながら譲渡ボランティアも始めました。 「保護された犬は人との生活に不安を抱えていることが多く、そのためにほえたりかんだりしてしまうんです。だから私たちが手をかけて問題行動を起こさないようにしてから、犬を飼うことに慣れた人などに譲っています」