「完全な破壊、それが現状だ」停戦合意発効、がれきとなった自宅への帰還望むレバノンとイスラエルの住民
イスラエルとイラン支援下にあるレバノンの武装組織ヒズボラの戦闘を巡るイスラエルとレバノンの停戦合意が、現地時間27日午前4時(日本時間同11時)に発効された。1年以上続いた戦闘によって避難を余儀なくされていた100万人以上の住民らは、国境付近の自宅に戻れるかもしれないという希望を抱いている。 レバノン国境沿いのイスラエル人地域にある両親の家を調べるアミヘイ・バトンさんは。「何もない、完全な破壊、それが現状だ」と語り、心が痛むと明かした。 レバノンの親イラン武装組織ヒズボラとイスラエル軍の戦闘により、イスラエル北部では過去14カ月間で、約6万人が家を追われた。停戦合意が発効された今、帰る家がなくても、帰還を望む人々がいる。 レバノンでは、この戦闘で120万人が避難を余儀なくされた。 ファティマ・ハッサン・ヌーレディンさんは自宅のさらに南側、シドン市に避難した。ヌーレディンさんは、困難な時期を共にした人々に別れを告げた。自宅に戻れるのは嬉しいが、ここで出会った友人と離れるのは残念だと話す。友人たちは姉妹のような存在だ、と語った。 ヒズボラはガザで戦闘が始まった翌日の2023年10月8日、イスラエルと交戦状態に。紛争は数カ月にわたって続いたが、過去2カ月はイスラエル軍が攻勢になり、イランの支援下にあるヒズボラ幹部らを空爆で殺害したほか、ヒズボラ戦闘員を攻撃するため、レバノン南部にも軍を派遣した。 米仏の仲介により、現地時間27日午前4時に停戦合意が発効された。この合意により、ヒズボラはイスラエルとの国境から撤退する必要がある。レバノン軍は27日、秩序回復に向けた措置を同国南部で開始した。 マフムド・アル=アウニーさんは南部ティルスの自宅に戻り、がれきの中に立った。移住の予定はなく、自宅にとどまることを誓うと語った。 「今朝も、ここに卵を集めに来た。1年半、毎日続けてきたことだ」 アン・ママンさんはイスラエル北部ザリットで鶏卵農場を経営している。 「ただ今日は、わずか90メートル先の国境から爆発音が聞こえない。これが続くことを願っているが、疑念もある」 停戦を歓迎するとした一方、長続きするかどうかは確信が持てないと語った。 「常にこうした状態が続いている。55年ここにいて、何度も同じことが起きる。それでも、またこの場所にいる。『平和』を手に入れたが、長くは続かないと思う。数カ月、1年、あるいは数年続くかもしれないが、すぐに同じ状況に戻るだろう」