芥川賞受賞の今村さん「一生取れないものだと思っていた」
令和最初となる第161回芥川賞は、今村夏子さん(39)の「むらさきのスカートの女」に決まった。17日夜に都内のホテルで開かれた記者会見で、今村さんは「(芥川賞は)とても手の届かない、一生取れないものだと思っていたので本当に驚きましたし、これからも頑張らないとな、と思っています」と笑顔を見せた。 【中継録画】第161回「芥川賞・直木賞」発表 古市憲寿さんまた受賞ならず
「書くことに集中している一瞬が楽しい」
今村さんは、2011年の「こちらあみ子」で小説家としてデビュー。芥川賞は、2016年の「あひる」で候補作に選ばれてから、3度目のノミネートでの受賞となった。 受賞の電話は、ビルの中のレストランで、担当編集者とお茶を飲んでいる時に受けた。受賞を知らせる言葉が信じられず、思わず「本当ですか」と問いただしたという。 受賞作には、近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性と「わたし」が登場する。書き終えた後、特に手応えは感じなかったというが、「でも何か自分らしいものが書けた、という感じはありました。あまり無理をしていないというか、身の丈にあったものが書けた」とも。 選考委員からは、登場する2人が同一人物なのか、それとも妄想なのかなど、様々な解釈が可能な点が高い評価を受けた。これに対しては「大変ありがたい。いろんな読み方をしてもらったほうが、私もうれしいです」と素直に喜んだ。 デビューから9年。小説の執筆はつらく、嫌だと思う時の方が多いとこぼすが、「書くことに集中している一瞬が楽しい。あの楽しさを味わいたくて書いています」。 プライベートでは、2歳の娘の母。娘さんに受賞の喜びを報告しますか、との質問に「報告しません。あまり読んでもらいたいと思わない」と述べて報道陣を笑わせた後、「いつか娘にも読ませたいものを書かせてもらえれば」と語った。 (取材・文:具志堅浩二)