野菜、ケーキ、揚げ物まで! 驚異の乾燥技術、フリーズドライ工場に単独取材㊦
揚げ物への挑戦は、当時の社長の「トンカツが食いたい」との一言から始まった。
最初は戻しやすい鳥ササミ肉のチキンカツを使い、卵とじにして商品化した。ただ、社長は「トンカツじゃないのか」と残念がったといい、挑戦を継続。精肉業者と部位や加工方法で試行錯誤を重ね、社長の一言から3年以上かけてようやく、豚肉でゴーサインが出たという。
「チームとしては『できません』とは言いたくない」と三村さん。実現したいのは、炊き立てご飯だという。ご飯の粘りが乾燥の邪魔をするが、粘りを取り除けばご飯らしくなくなる。まさしく難題だ。
南海トラフ巨大地震や首都直下地震などが想定される中、災害備蓄食としてニーズが高まるフリーズドライ製品には、技術だけではなく開発者のこだわりも詰まっていた。
軽くて持ち運びやすく、お湯で作れるフリーズドライのご飯を避難所でも食べられる日が、いつか来るかもしれない。(市岡豊大)