森且行「夢だったオートレーサーに。日本一になった喜びも束の間、レース中に落車。手術4回の大ケガから、奇跡の復活を遂げるまで」
アイドルからオートレーサーに転身した森且行さんを描いたドキュメンタリー映画『オートレーサー森且行 約束のオーバル 劇場版』が11月29日に全国公開されます。1996年に転身して24年、オートレースの最高ランクSG(スーパーグレード)で優勝を果たし、念願だった「日本一」の称号を手にした森さん。しかしその喜びも束の間、レース中の落車により、選手復帰が困難なほどの大ケガを負うことに。なぜこの道を選んだのか、そして奇跡の生還までの道のりを語ります(構成◎上田恵子 撮影◎本社・武田裕介) 【写真】1年後に5回目の手術をして、背中のプレートと総重量250gのボルトを摘出 * * * * * * * ◆ファンの皆さんに観てほしいという思い オートレーサーとしての日常を映画にすると聞いた時は、「まさか!」という気持ちでした。最初は断り続けていたのですが、考えてみたら、僕をずっと追いかけてくれて素材を持っているのは穂坂(友紀)監督しかいない。ファンの皆さんに観てほしいという思いもあり、お任せすることに決めました。 完成した映画を観て、まず感謝の気持ちでいっぱいになりました。僕の知らないところでカメラが回っていて、ケガの治療でお世話になった病院の先生方や兄、養成所の同期(25期)の皆までもが取材に協力してくれて……。 しかもドキュメンタリーなので、取材される側は思ったことを言わないといけない。それを観て「こうやって皆が僕を助け、一緒に辛い思いをしてくれたんだな」とズシンと胸に来るものがありましたし、「取材を受けてくれてありがとうございます」という気持ちでしたね。 カメラを回し続けてくれた監督のおかげで、僕の知らなかった舞台裏を観ることができた。本当に感謝しかありません。
◆「お前もう芸能界に戻れ!」「歌ってろ!」という声 オートレーサーとして、初めてコースを走った日のことは今も忘れられません。僕が今まで観てきたどのレースよりも、会場がファンの方で埋め尽くされていて。まずその多さに圧倒され、ビビッていた記憶があります。(笑) ヘルメットを被ってスタートラインについた瞬間、「こんなに応援されているんだから絶対に勝たなくては」と思いましたし、1着でゴールした時は「やっとレーサーになれた、夢が叶ったんだ」という気持ちでいっぱいでした。 一方で、応援の声だけでなくヤジもありました。公営競技ということもあり「死ね!」くらいの言葉を余裕で言われることも。 それまではアイドルだったからヤジを飛ばされた経験なんてなかったですし、僕がオートレースを観に行っていた時もこんなに飛んでなかったんです。 やっぱり芸能界から入ってきて、生ぬるい気持ちでやってるんじゃないかと思われたのでしょうね。僕が転んだりすると、「お前もう芸能界に戻れ!」とか「歌ってろ!」などと言われました。他の同期が落車しても言われないのに。