【重たい加入義務】年金滞納、強制徴収もありうるが…老後に受け取る「平均的な年金額」は?〈公認会計士が解説〉
年金制度が複雑になってしまった、歴史的な背景
年金制度は非常に複雑だが、このように階層が分かれているのは、年金制度ができた経緯にある。 年金とは、歳をとって働けなくなった後も暮らしていけるよう、みんなでお金を出し合い、支え合おうという仕組みだ。 一般の労働者では、船員や工場労働者、国防を支える人たちから年金制度が整備されていき、1944年には事務職の労働者も含めた厚生年金保険の制度ができた。 国民年金の制度が整ったのはそのさらにそのあとの1961年のことで、それまで年金に入ることができなかった農業、漁業、自営業をしている人たちのために作られた。いまのように強制加入になるのは1986年からのことである。
公的年金、一体いくらもらえるのか?
老齢年金の大まかな制度については上記の通りだが、気になるのは「一体いくら年金がもらえるのか」という点だろう。 実は「国民年金」と「厚生年金」では、保険料の額を決める仕組みがまったく違う。 国民年金はだれが払っても保険料は同じ、つまり「定額」であり、令和5年度の保険料は月に1万6,520円となっている。 一方、厚生年金の保険料は18.3%の「定率」と定められている。つまり、毎月の給与と賞与に18.3%の保険料率を掛けた額が保険料となり、それを本人と会社で折半して国に納める。そのため、もらう給料の金額によって、納める保険料は異なってくる。 納める保険料が違えば、当然だが、将来受け取る年金額も変わる。厚生年金は給料が高い人ほど納める保険料も高く、将来もらえる年金も多くなる。 だが国民年金は、保険料が同じで、保険料を長く納めた人ほど年金が多くなる。 金額の目安だが、国民年金は、保険料を40年間、免除などを受けずに納めた場合に満額となり、1ヵ月およそ6万5,000円程度だ。だが、40年間満額で納める人は多くなく、日本人の平均はだいたい毎月5万6,000円くらいだといわれている。 国民年金の額が少ないと思うかもしれないが、国民年金のみとなる自営業や農業などは定年がないため、本人が元気なら長く働ける。つまり国民年金は、年金以外にも収入がある人の生活を支えるという考えをもとに設計された制度なのである。 一方の厚生年金の場合は、日本人の平均でだいたい14万6,000円程度。ただし、この金額は国民年金を含んでいる。厚生年金に加入している人は、国民年金の分も合わせて保険料を払っているため、両方の年金がもらえるのだ。 厚生年金の場合、対象となる公務員・会社員は退職すると無収入になるため、老後も夫婦2人で生活していける程度の金額をもらえる、という制度設計になっている。