2025年「フィリピン・経済成長」マルコス大統領vs.ドゥテルテ副大統領の対立深刻化を懸念
低迷する「比・不動産市況」…回復のカギを握るのは?
フィリピンの銀行の不動産部門へのエクスポージャー比率は2023年9月末時点で19.55%となり、前年同期の20.55%および2023年6月末の19.92%から減少しました。この比率の低下は2019年9月以来の最低水準です。BSPは金融安定性を維持するために、銀行の不動産業界への貸出状況を監視しています。 銀行による不動産向け融資と投資は、前年同期比2%増の3兆2,200億ペソに達しました。内訳として、不動産ローン総額は前年同期比7.9%増の2兆8,400億ペソとなり、住宅用不動産ローンは8.1%増の1兆700億ペソ、商業用不動産ローンは7.8%増の1兆7,800億ペソとなりました。一方、不動産向けの延滞ローンは10%増加し、1,481億ペソに達しましたが、不良債権比率はわずかに改善し、前年の3.95%から3.92%に減少しました。 カナダのトロントに本社を置く、世界的な不動産サービスおよび投資管理会社であるコリアーズは、開発業者が新規プロジェクトの立ち上げに慎重であると指摘しました。2023年1月から9月までの新規開発件数は前年同期比で約50~60%減少しており、オフィススペースの空室面積は260万平方メートルに達しているため、これが吸収されるには約5年かかると見られています。メトロマニラの住宅市場でも、未販売のコンドミニアム在庫の市場吸収には5年以上かかると予測されています。 また、フィリピン政府がオフショアゲーミング事業者(POGO)を禁止した影響も不動産市場に影を落としています。2019年には298社がライセンスを持っていましたが、現在は17社に減少しており、この事業者の撤退がオフィススペースと住宅市場の空室増加を引き起こしました。 一方で、フィリピン中央銀行は2024年にさらに政策金利を引き下げる予定であり、これが不動産市場の回復に寄与する可能性があります。2024年にはすでに2回の利下げが行われましたが、住宅ローン金利の低下が市場に与える影響はまだ不透明。開発業者は既存の在庫の吸収を優先し、新規プロジェクトの立ち上げを控えているため、銀行の不動産部門へのエクスポージャーは今後も引き続き低下する見通しです。
家村 均