激動の「選挙イヤー」、日本は与党惨敗 国際秩序の行方は【けいざい百景】
2024年は世界90カ国以上で重要な選挙が続く歴史的な「選挙イヤー」となった。日本では10月の衆院選で与党の自民、公明両党が過半数割れし惨敗。海外でも、政治基盤が揺らぐ結果となった国もあった。ウクライナ侵攻や中東情勢の悪化が一段と進み、米中対立が激しさを増す中、最大の目玉だった米大統領選では、共和党のトランプ前大統領が勝利した。政局に時間を費やすことになった石破茂首相。15日からペルーで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議、18日からブラジルで開催される20カ国・地域首脳会議(G20サミット)といった世界の主要国の首脳がそろう場で、果たして国際通商秩序の再構築に取り組む日本の立場を浸透させられるのだろうか。(時事通信経済部 栄野敦雄) 【図解】ドナルド・トランプ氏ってこんな人 ◆与党惨敗、政権交代も 22年2月にロシアがウクライナに侵攻して以降、世界情勢は大きく変わった。黒海経由での穀物輸出が制限され、小麦をはじめとする穀物の価格が跳ね上がり、世界的な物価上昇をもたらした。中東でも大規模な軍事衝突によって被害が拡大し続けている。 そのウクライナでは、ロシアによる侵攻を理由に戒厳令が延長。今年3月の大統領選を先送りした。ゼレンスキー大統領の5年の任期は延び、ロシアへの抗戦を続けている。ロシアではプーチン大統領が3月の選挙で5期目の座を手にした。 一方、各国で体制を揺るがす選挙も際立った。韓国では4月、総選挙で与党「国民の力」が惨敗。尹錫悦政権への不満がくすぶる中、最大野党だった革新系の「共に民主党」が躍進し、国会で野党が過半数を占める「ねじれ」が生じた。英国で7月行われた下院総選挙でも、与党・保守党の政権運営への不信感が募り、最大野党・労働党が大勝。14年ぶりの政権交代が実現した。 日本では、自民党総裁選挙で総裁に選出された石破代表を擁して挑んだ10月の衆院選で、与党が過半数割れの大敗を喫した。米国では5日(日本時間6日)、トランプ氏が民主党のハリス副大統領との激しい選挙戦を制した。 ◆大国間競争に回帰 世界の主要な国で体制を揺るがす選挙が行われた24年。得票を意識したポピュリズム(大衆迎合主義)が高まり、保護主義の台頭への懸念は強まっている。 米国では、バイデン政権が9月、中国に対する電気自動車(EV)の輸入関税を25%から100%に引き上げた。選挙戦最終盤の10月末には、軍事用途の人工知能(AI)や先端半導体への投資を禁止するなどの規制を来年早々に発効すると発表した。欧州連合(EU)も、中国産EVへの追加関税を引き上げた。 背景にあるのは、中国によるEVなどの過剰な産業保護政策だ。中国はEVや蓄電池といった製品に巨額の補助金を付け、国内需要で賄い切れないほどの生産を後押し。米国や欧州をはじめとする地域で、安価な製品が中国から流入し、産業が打撃を受けている。 経済産業省はこうした状況について、「国際秩序は大国間競争の時代に回帰している」と指摘。通商など、軍事以外の手段も地政学的対立に持ち込まれていることを危惧している。