「聖人・孔子」をプロパガンダに利用する中国の茶番 マルクスと孔子の対談動画が物笑いの種に
歴代の受賞者は、台湾の中国国民党名誉主席の連戦、ロシアのプーチン大統領、キューバのカストロ議長……と、中国の体制と親和的な海外の要人たちが多くを占めていた。しかし、ほとんどの選出者が受賞を固辞したため、中国側が当該国の留学生などを代理に立てて強引に授賞式を開くという不面目な事態も常態化していた(2013年に受賞した中国人僧侶の釈一誠のみ、本人が授賞式に出席)。 ちなみに2015年には、日中友好人士として知られる村山富市元首相が最終選考まで残ったが、村山側が健康状態を理由として辞退したため、賞はジンバブエの独裁者であったムガベ大統領に贈られている。
この孔子平和賞はあまりにも「茶番」感が強いためか、2017年を最後に廃止された。ただ、世界で最も権威があるノーベル平和賞に対抗するために、中国が「孔子」を持ち出したことは興味深い。孔子学院も孔子平和賞も、最終的には成功していないとはいえ、近年の中国はパブリック・ディプロマシーに孔子を盛んに活用しているのである。 孔子は世界史上でもソクラテスと並び称される有名な思想家だ。その言行録である『論語』も、人類全体の古典として各国語に訳され、広く読まれている。
現代の中国が他国からの尊敬を勝ちとりつつ、自国の知的・文化的優位性をアピールするうえで、アイコンとして最も適した人物なのは確かである。 2023年10月には、中国の人気テレビ局である湖南衛視で、「マルクスが孔子に会ったとき」という大型教養番組が放送されている。その内容は、マルクス(なぜか流暢な中国語を話す)が時空を超えて孔子の学堂を訪ね、ともに理想の世界について語り合うという珍妙なものだ。 ■マルクスが孔子と対談する?
番組中ではマルクス役の俳優が孔子役の俳優に「あなたと私の見解は多くの部分で似たところがある」と語りかけるシーンもあり、在外中国人の反体制派の間ではそのナンセンスぶりが物笑いの種になった。 だが、番組は党機関紙『人民日報』のウェブサイトで大々的に宣伝され、同年夏にマルクス主義と中国の伝統文化との接続を唱える「第2の結合」の講話をおこなった習近平の姿が映像の冒頭に挿入されるなど、党の意向が強く反映されている。