声でパイロットが「見えてくる」航空管制官が殺到する交信を受け頭の中で考えていること
前述した通り、周波数をプリセットする事前対応ができるわけですから、次の管制官の周波数を知ることは簡単です。各国が発行する航空路誌(Aeronautical Information Publication:AIP)も公表されており、誰でも世界中の空港、空域を管制する管制官の周波数などを閲覧することができます。パイロットは、管制官にいわれるまでもなく、その運航で交信する周波数を事前に知ることができるわけです。
周波数の切り替えはボタン操作で簡単に行なえるので、交信の切り替え指示を受けていないパイロットがうっかり次の周波数帯にセットするということも起こり得ます。しかし、それをされてしまうと、管制官はまさに今、指示を出したいときに指示を出せないという状態になってしまうのです。 そんなときは、どこの周波数に行ってしまったのか、捜索が始まります。隣の管轄エリアを担当する管制官なのか、もう1つ先まで行ってしまっているのか。もしかすると誰も存在しない周波数をセットしてしまい、孤立しているかもしれません。
こういうケースさえ起こり得るので、あらゆる可能性を考えて、自分の管轄するエリアを安全に保つために、両方の耳を使って常にモニタリングしながら状況を把握する必要があります。無線交信の合間を見つけて、状況のアップデートを継続するのは大変な労力がかかります。
タワーマン :元航空管制官・航空専門家