声でパイロットが「見えてくる」航空管制官が殺到する交信を受け頭の中で考えていること
通常、次に呼びこむ予定の周波数は、パイロットの事前準備の段階であらかじめセットしますが、パイロットが数字を見間違えてプリセット(前もって設定すること)している場合もありますし、混雑しているときにのみ、追加的に使用する周波数もあります。 ■声でパイロットが「見えてくる」 管制官の交信予定のリストにない機が呼びこんできたときは、便名を正確に聞き取り、現在の位置や要求を把握したうえで、本当に自分が指示してよい対象なのかを管制官同士で確認する必要があります。こうしたさまざまな観察を、管制官は耳だけを頼りに行なわなければならないのです。
そういう意味では、管制官はヒアリングがもっとも重要です。イヤホンから聞こえてくる声には、常に神経を集中させます。すると、しゃべっているパイロットが「見えてくる」ようになります。 日本人なのか、それとも英語のネイティブスピーカーなのかはもちろんですが、同じ英語をしゃべっていても、その発音で国籍の違いまで聞き取れるようになります。パイロットの国籍が特定できれば、相手を識別する情報が1つ増えます。 管制にとって、いちばん大切なのは安全を守ることです。そのためには、自分が管轄しているエリア、周波数の交通状況を常に把握することが肝要です。自分のエリアに今どんな飛行機がいて、自分がそれぞれの機にどんな指示を出し、実際その通りに動いているか監視します。
その把握さえできていれば、間違えて呼びこんできた飛行機がいたとしても、テリトリーのなかを保護するためには何を指示すればよいのか、明確にすることができるというわけです。 ■交信中のパイロットが突然「消えて」しまうことも… 管制官がパイロットに話しかけても、まったく応答がないことがあります。さっきまで交信していたのに、消えてしまうのです。 管制官が、現在担当している機を次の管轄の管制官に受け渡すときは、「(管制を○○に引き継ぐので)周波数○○に合わせて、次の管制官に通信設定(コンタクト)してください」とパイロットに指示します。逆にいえば、この指示があるまでは、周波数を勝手に切り替えてはいけないのです。ところが、パイロットにとっては、このルールが面倒に思えることもあるのです。