第１７０回天皇賞・秋を勝利したドウデュースの馬上でガッツポーズする武豊騎手

◇本城雅人コラム「ぱかぱか日和」　天皇賞・秋（Ｇ１・２７日・東京・芝２０００メートル） 　逃げ馬がいないことは分かっていた。だからリバティアイランドの川田騎手も、レーベンスティールのルメール騎手も比較的前に行った。前半１０００メートルが５９秒９。だが、ドウデュースは後ろから２頭目。常識的に届くには不可能なポジションである。 　「逃げられれば」「好位につけられれば」など「〇〇できれば」くらいの気持ちで、武豊騎手はゲートを出るまで何ごとも決めつけない。今回は「腹をくくっていた」と話していたが、かといって決め打ちであのポジションを取りに行ったわけではなく、好スタートから馬と息を合わせているうちに、そうなっただけだと思っている。 　ペースが遅いことは感じていた。それでも焦らないのが、武豊騎手が誰よりも秀でている点である。４コーナーは外を回りすぎないように気をつけた。直線でごぼう抜きしたのはドウデュースの潜在能力の高さもあるが、１５頭中で最もリズムよく走らせ、脚をためたからだ。上がり３ハロンは３２秒５。最高のプロデュースで不可能を可能にしたのだ。 　しかしドウデュースほど万能な馬はいないのではないか。Ｇ１・４勝目、４つは朝日杯ＦＳ、日本ダービー、有馬記念、そして天皇賞・秋と、牡馬を所有するホースマンならすべて欲しいタイトルである。 　しかも１６００メートルから２５００メートル。２歳、３歳、４歳、５歳と各年齢で勝利した。年齢、距離を問わない幅広い活躍は、種牡馬になってからも繁殖牝馬に困ることはなく、さまざまなタイプの産駒を輩出するはずだ。 　残りは多くて２戦と武豊騎手は話していた。もちろんジャパンＣと有馬記念。前者は日本ダービーで勝った東京の２４００メートル、後者はまくっていく大胆な競馬で昨年制した。秋の王道３連勝で有終の美を飾るのはもちろんだが、まずは次走、オーギュストロダンをはじめ久々に強い外国馬がやってくるジャパンＣで、同馬が世界に通用したことを証明してほしい。（作家）