いつからヒトは「綺麗な景色」が見られるようになったのか…1億7000万年におよぶ「眼の進化」
ダーウィンの『種の起源』が刊行されてから150年以上が経った今、進化論のエッセンスは日常にも浸透している。「常に進化し続ける」「変化できるものだけが生き残る」。こんな言葉を一度は耳にしたことがある人も多いだろう。しかし、実際の生物の進化は、そんなにシンプルなのだろうか。『ダーウィンの進化論はどこまで正しいのか? 』では、最新の研究成果も交えながら、複雑だからこそ面白い生物進化の仕組みを丁寧に解説していく。 【マンガ】19歳理系大学生が「虫捕り」してたら死にかけた「衝撃事件」
1億7000万年かけて
連続的に徐々に進化が生じたとしても、複雑な適応形質が進化するには、その変化のなかでいくつかの新しい段階へのステップを必要とする。脊椎動物の眼も、『種の起源について』を書いたミバートによって連続的な進化では説明が困難とされた複雑な形質の例だ。眼の進化には、4つの主要な段階があると考えられている(図表1)。 最初の段階(クラス1)は、光を感知する光センサーの獲得である。周りの光を感知することで、昼と夜といった一日の活動の調整に使われたり、水中で生活する動物では水深を感知したりするのに利用されたと考えられる。 次のステップ(クラス2)は、どの方向から光が来るかを感知することができる指向性光受容器の進化である。これは、ある方向からの光を遮断するような遮蔽物を光センサーのそばに配置することで可能になる。 クラス3では、光センサーをカップ状のくぼみに集合させることで、光の方向が分かるだけでなく、動いたときの光の動きや光に対しての自分の動きを感知できる進化が生じた。さらに低解像度だが、周囲の構造物なども感知できるようになった。 そしてクラス4では、外からの光を集めて焦点を合わせるレンズのような装置を進化させ、高解像度で周りを検知することが可能になった。こうして眼は、餌生物を探したり、捕食者を検知して逃げるのに役立つようになったと考えられる。 ヒトを含めた脊椎動物や昆虫などの節足動物の祖先となる生物は約7億年前に誕生し、クラス1の段階である光センサーをもっていたと考えられている。そしてクラス4の眼が出現したのはカンブリア紀初期で、約5億3000万年前と推定されている。つまり、約1億7000万年の間でクラス1からクラス4へと進化し、現在、脊椎動物がもっているような高度な眼が誕生したわけである。