運動部に入れない、行事に参加できない、夏休みの思い出がない――。「贅沢」でも「可哀想」でもない“体験格差”の問題とは
「体験」の機会が過去1年間で一つもない
「体験格差」という言葉をご存じでしょうか。公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンが行った「子どもの『体験格差』実態調査 最終報告書」によると、 年収300万円未満のいわゆる「低所得家庭」では、子どもたちの「体験」が平均的に少ないというだけでなく、「体験」の機会が過去1年間で一つもない「ゼロ」の状態にある子どもたちが、全体の3人に1人近くまでにのぼることがわかった。(『体験格差』今井悠介著 講談社)といいます。「体験」とは具体的に何を指すのでしょうか。 『体験格差』(今井悠介著 講談社)によると、体験は「放課後の体験(定期的に行う活動)」と、「休日の体験(単発で行う活動)」に分けられます。 放課後の体験は球技や水泳といったスポーツ・運動、音楽や習字などの文化・芸術。休日の体験はキャンプなどの自然体験や、ボランティアなどの社会体験、博物館や美術館見学、地域の行事などの文化的体験などがそれにあたるそうです。
親の経済的格差が影響
また、一見お金がかからなそうな、「地域の行事・お祭り・イベント」への参加率でも、世帯年収による違いが見られました。 こういった体験において、「体験ゼロ」(学校外の体験が、直近1年間で「一つもない」)と回答した子どもの割合は、世帯年収300万円未満で29.9%、300万~599万円で20.2%、600万円以上で11.3%と、経済的格差による影響が大きく見られました。 また、文部科学省が行なった「令和3年度子供の学習費調査」で、各家庭が学校外で負担する費用を「補助学習費」と「その他の学校外活動費」に分類して調査した項目で、「その他の学校活動費」(スポーツや音楽などの習い事にかかる費用、キャンプやレジャーなどの費用)は、「公立学校に通う小学生の場合、世帯年収400万円未満の家庭で年間7.9万円、世帯年収1200万円以上の家庭で年間20.1万円と、2.5倍以上の格差が生じている」といいます。