佐藤琢磨に訊く“息子”佐藤凛太郎のHRSスカラシップ獲得。父親として、そして同スクールの校長として……
■佐藤凛太郎というレーシングドライバー
HRSのスカラシップを首席で獲得したとしても、すぐに海外のレースに参加できるとは限らない。近年では多くのスカラシップ生が海を渡ったが、これは確定した道筋というわけではないという。スカラシップ生の中でも、今後の伸び率が高いという期待値があるドライバーのみが、海外のシリーズ(最近ではフランスF4が多い)に挑むことができるわけだ。 「毎年、講師陣の意見から満場一致となった場合のみフランス行きが決まります。生徒のこれまでの取り組み方などを見守りながら、人柄や可能性を慎重に考慮し、今後の成長への期待値も含めて、来季フランスF4に送り込むかどうかを決めていきます。自分はそういう経過を見させてもらい、最終的に『分かりました』と受け入れる立場なんです」 「今年は特に血縁関係があるので、いつもより余計にそこには入らないようにしていました。評価ミーティングはずっと黙って聴いていましたね」 佐藤琢磨は、No Attack No Chanceのスローガンでも知られる通り、アグレッシブなドライビングスタイルが身上。それでこれまで、数々の名シーンを生み出してきた。では息子凛太郎は、どんなドライバーなのか? 父親としてではなく、あえてスクールの校長という立場で評価して欲しいと尋ねてみた。 「混戦の中から常に挑戦して、前に出ようとする……少なくともそういう試みをずっとやってきたという印象です」 「毎回色々な講師、たとえば野尻(智紀)と走る時もあるし、(佐藤)蓮と走る時もあるんですが、そこで抜きつ抜かれつの攻防を見せたというのは、関係者や講師たちも話していました」 「スカラシップ選考会の最終日は実際に見ていましたが、彼は予選をうまく戦えなかったので後方からのスタートでしたが、追い抜きが非常に難しくほとんど見られないなか、前を抜いていった。選考会に入ってからの総合点だけでなく、そういうガッツを年間通して見せたので、今後ヨーロッパの激しいレースの中でもやっていけるんじゃないか……講師たちはそう口を揃えていました」 今年は加藤大翔がフランスF4でチャンピオンに輝いた。当然来季の佐藤凛太郎には、その加藤と同じように同シリーズでチャンピオンを獲得することが期待される。 「校長としては、もちろんそれを期待しています。世界に挑戦するドライバーたちの活躍は、後に続く子たちの、いい刺激になりますから」 佐藤凛太郎は、この先どんなキャリアを歩んでいくことになるのだろうか? 今は確かに「佐藤琢磨の息子」と呼ばれているかもしれない。しかし彼が光り輝けば、逆に佐藤琢磨が「佐藤凛太郎の親父さん」と呼ばれる、そんな日も来るはずだ。
田中健一