香港経済新聞編集部が選ぶ2024年の十大ニュース
2024年の十大ニュースは、まず基本法第23条に基づく維護国家安全条例草案の法制化が最大のニュースとして挙げられる。香港経済においては香港人が深センなど中国本土に行って消費を行う「北上消費」の影響で低迷したほか、日本と香港の関係では、東京電力福島第一原子力発電所に関連する多核種除去設備(ALPS)処理水が海洋放出により10都県の水産物の輸入禁止措置が続くものの、航空路線は増加し、日系飲食店が続々と進出するなど関係が深まった。香港の1年を振り返る。(香港経済新聞) (1)基本法23条に基づく国家安全維持条例法案(条例案)が法制化(3月23日) 2020年に香港国家安全維持法が全国人民代表大会で制定されたが、3月19日に立法会で制定された第23条に基づく国家安全維持条例は、国安法でカバーできない部分を条例で補完するもの。国際社会からも多く批判の声が上がった。 (2)「北上消費」で内需不振(年間を通じ) 2023年後半から動きがみられていた香港人による深?などで買い物や飲食を楽しむ「北上消費」が本格化。その結果、香港経済は内需不足に陥り、特に飲食店と小売店は厳しい経営環境に陥った。また、基幹産業で観光業も来港者が思ったより伸びないことも景気低迷に拍車をかけている。 (3)香港への観光客に対し往来を活発にする政策を推進(7月9日、12月2日など) 香港経済の低迷を打破するために実施された施策が深センやマカオなどとの往来を容易にすることだった。非中国籍の永久居民に対して回郷証の発行を7月10日に始め、同月19日は、香港とマカオの永久居民はQRコードで両都市に入境できるようになった。海外からの観光客には10月16日から「旅客抵港申請表(Arrival Card)」の提出が不要になり、12月1日には深セン市民が何度でも来港できるマルチビザを再開した。 (4)香港と日本を結ぶ路線が増加。第3滑走路供用開始(7月5日、11月28日など) 香港人の日本旅行への需要の高まりから香港と日本の地方都市を結ぶ路線の就航や増便が相次いだ。グレーターベイ航空は米子、徳島、仙台に、香港航空は仙台、香港エクスプレスは静岡、仙台に新規就航した。仙台は一気に3社が就航する人気ぶりとなっているほか、増便も相次ぐ。鹿児島、広島などコロナ前の路線も復便した。香港国際空港では11月28日からは第3滑走路の供用が始まった。離発着のキャパシティーが限界に達していたための措置で、2035年には1億2000万人が利用できるようになる。 (5)日系の飲食店、続々と香港に進出(12月19日など) 日系の飲食企業は、これまでも香港にたくさん進出してきたが、2024年も進出ラッシュだった。「挽き肉と米」「町田商店」「焼肉たけ田」「Age3」「しゃぶしゃぶれたす」「鶴橋風月」「鰻(うなぎ)の成瀬」「がってん寿司(ずし)」「肉肉大米」「うなぎ四代目菊川」「鳥貴族」「ミスタードーナツ」「TruffleBAKERY」「カリガリなどが香港上陸。既に進出している店も支店を増やすなど香港での日本食の人気は依然として高い。 (6)「トワイライト・ウォリアーズ」と「ラストダンス」など、ヒット映画も続くも映画館の閉鎖も多く(5月2日) 2024年の香港映画は、2023年に大ヒットした「毒舌大状(A Guilty Conscience。邦題=毒舌弁護人~正義への戦い~)」に続き、「九龍城寨之圍城(Twilight of the Warriors: Walled In。邦題=トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦)」と「破・地獄(The Last Dance。邦題=ラストダンス)」が大ヒット。一方、銅鑼湾(Causeway Bay)で営業していた「総統戯院(President Theatre)」が58年の歴史に幕を閉じ、シネコン大手のMCLやCinema Cityも不採算店を閉鎖。少なくとも7つの映画館が閉鎖された。 (7)パリ五輪、香港選手、活躍(8月12日) パリ五輪での香港選手団は東京五輪に引き続き、金メダル2個、銅メダル2個と活躍した。張家朗選手がフェンシング、男子フルーレ個人で連覇したほか、江旻●(Vivian Kong)選手が女子エペ個人で金メダルに輝いた。香港にとっては史上初めて2大会連続でのメダル獲得で、かつ複数個の金メダルを獲得したことになる。また、何詩●(Siobhan Bernadette Haughey)選手が女子水泳の100メートルと200メートル自由形で共に銅メダルに輝いた。 (8)香港経済自由度1位に返り咲き(10月25日付) カナダ西部のバンクーバーに本部を置く公的なシンクタンク「フレーザー・インスティテュート」は経済自由度を評価する「世界の経済自由度2024(Economic Freedom of the World: 2024 Annual Report)」を発表し、香港は8.58 ポイントで1位に輝いた。2022年まで28年連続で世界一だったが、2023年にシンガポールに抜かれて2位になっており、トップを奪還した。 (9)域内イベントも盛況。パンダ、6頭体制に、ドラえもんも香港を席巻(5月26日、12月18日など) 香港のテーマパーク「海洋公園(Ocean Park)」で8月15日、ジャイアントパンダの「盈盈(Ying Ying)」が双子の赤ちゃんを出産した。9月26日には中国本土から雄の「安安(Anan)」と雌の「可可(Keke)」の2頭のジャイアントパンダを受け入れ、一気に6頭体制に。12月には香港各地で記念イベントが行われパンダ一色となった。一色と言えば、5月~8月はドラえもんが香港をジャックした。映画最新作の上映に合わせて、高さ12メートルのドラえもん、ドローンショー、各種展示会などが開催された。 (10)プラスチック製品の制限始まり、ホテルからアメニティーが消える(4月23日) 深刻化する環境問題に関連し、2023年10月立法会を通過したプラスチック製品の扱いを大きく制限する条例案を法制化。その第1弾が4月22日にスタートした。提供禁止または有料での提供となるが、例えば、テイクアウトで発泡スチロール製の容器が使用禁止になった。観光では、ホテルでの歯ブラシ、歯磨き粉などのアメニティーが基本的に部屋から消えた。自ら持ち込むか、有償でホテルから購入するか、最寄りのドラッグストアで買うことになる。 ランクインしなかったが「大昌食品市場(DCH FOOD MART)」が全28店閉鎖したほか、多くの飲食店が閉店する動き見られた。日本のアーティストも数多く公演をした九龍湾(Kowloon Bay)の「九龍湾国際展貿中心(KITEC)」も閉鎖し、複合ビルに建て替えられる計画となっている。一方、店舗を多く減らしていた「翠華餐廳」が再び中環に戻ってきたり、閉店していた、飲茶で有名な「蓮香楼」が復活したりするなど、再開する動きも見られる。日本の飲食店も多く出店しているが、同時に韓国からの訪香韓国人はコロナ前の水準に戻り、韓国系飲食店の出店も相次いでいる。 香港競馬では6人目の女性騎手が誕生したり、1.5億年前前後と推定される恐竜の化石が発見されたりするというニュースもあった。日本から香港への来港は大きく減少し、街中で日本語が聞こえることも少なくなった香港。2025年も香港への関心を寄せてもらうために発信を続けていきたい。 ●=りっしんべんに恵、●=草かんむりに倍
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