オオクワガタ採集に人生を懸ける男たちのノンフィクション、関西の漁港めしガイドブック…今読みたい本2冊
ネイチャーライフに根差した良書をご紹介。今回は野性のオオクワガタを探すノンフィクション、そして漁港に隣接した食事処を紹介する紀行ガイドブックだ。
BOOK 01 たかが虫採りされど虫採り 突き抜けた情熱に羨望する
『オオクワガタに人生を懸けた男たち』 野澤亘伸著 双葉社 ¥1,980 昆虫少年・少女憧れの的、オオクワガタ。かつては天然の大型個体が10万円を超える高値で売買され「黒いダイヤ」ともいわれていた。’90年代中ごろからは飼育技術が発達し、天然を凌ぐ大型の個体も作出できるようになり、今ではネットショップでも入手できる。しかし、自然下での採集は極めて難しく、天然個体の希少さは現在も変わらない。 本書は、そんな幻ともいえるオオクワガタを探し求めるある集団の実態に迫るノンフィクションだ。集団の名は「インフィニティー・ブラック」。会社員、ショップ運営、俳優、メンバーはさまざまなバックボーンを持つ。平日の夜や休日を使って、夜な夜な車を走らせオオクワ探しへ。季節を問わず、山に足を踏み入れ、木に登り、雪の中でもマタギのごとく歩きまわる。 注目したいのは彼らの第一の目的はオオクワガタを見つけることにある。採集して売るなどという発想は毛頭ない。自分の力で見つけたい、まだ誰も見つけていない場所で見つけたい、そんな願望が原動力だ。だがあまりの熱中ぶりに家族に不倫を疑われたり、山中で背筋がひんやりするような不思議な体験をしたり。簡単にはいかないことほど、人はのめり込むのかもしれない。読み手のこちらにも何だか火がつきそうだ。
BOOK 02 きらきら輝く 漁港めし 海沿いの旅
『大阪 京都 神戸から行く漁港食堂』 うぬまいちろう著 西日本出版社 ¥1,760 本書は漁港に隣接した食事処を紹介する紀行ガイドブック。漁港と食堂、その場所で必食ともいえる魚メニューの紹介はもちろんのこと、漁の仕掛けや起源、名物食の成り立ちといった漁港と魚にまつわる話も満載だ。また、そこで働く人たちの姿も垣間見える。刺身、焼き、揚げ、煮付け、炙り、見事な「漁港めし」はどれも眩しく映り、ページをめくれば魚が食べたくなること間違いなし……。 登場するのは瀬戸内海など関西を中心とした漁港だが、東は富山、西は鳥取まで掲載。魚を食べるなら漁港へ! 旅先でもし漁港があるなら、必ず立ち寄ってみたくなるだろう。 ※構成/須藤ナオミ(BOOK) (BE-PAL 2024年11月号より)
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