《実録レポート》本誌記者の実家が狙われた!闇バイト「強盗団」の世界で出回る「闇名簿」と「個人情報」のお値段
「顧客リスト」には80代以上の女性が多数
顧客リストは大抵の場合、エクセルにまとめられている。この人物から、以前使用していたというリストを見せてもらった。「セミナー参加者」と銘打たれた一覧表には1000人以上の氏名、性別、生年、住所、電話番号が記されている。生年に注目すると、多くが1930年~'40年代で、80代以上の高齢者が目立つ。しかも、このリストに載っているのはすべて女性だった。 犯罪組織は、こうした名簿を入手してもすぐに強盗に入るわけではない。自らリストにある番号に電話をかけるなどして、情報をブラッシュアップするのだ。これを、名簿を「洗う」という。 犯罪組織の取材を続けるジャーナリストの竹輪次郎氏は、以前、衝撃の現場を見たことがあるという。 「そこは、表向きは貴金属買い取り業者だったのですが、オフィスを訪れると、50人以上の女性が電話をかけまくっている。よくよく聞くと、貴金属を買い取りますと言いながら、資産状況や貴金属の置き場所などを聞き出している。要は裏で名簿屋も兼ねていたのです。普通の主婦のような方が何人も働いていました」 記者の実家にかかってきた電話も、名簿を「洗う」ことが目的だった可能性がある。そこでまんまとタンス預金のことを口にしてしまったわけだ。
一度載ると消せない
闇バイトで雇った若者を現地に派遣して調べさせるケースもある。よくあるのは、警察やリフォーム業者、ネット回線業者を装い、対面で家族構成などを聞き出す手口だ。 今年9月、空き巣に入られたという北海道日本ハムファイターズの栗山英樹元監督の自宅近くでも、不審な目撃情報があった。近所の女性が語る。 「家の前で洗車をしていたら、スーツを着た若い男性がきょろきょろしながら歩いていて、私と目が合うと『産婦人科はどこですか?』って突然聞いてきたのよ。今はスマホがあるから調べられるでしょう。変でしたね」 犯罪組織は、駐車場に停めてある車など、ちょっとした情報からもターゲットの生活ぶりを探る。 「特殊詐欺グループの間では、ポストに『配達ご苦労さま』と書いたシールを貼ってある家は、お人好しで騙されやすいという定説がありました」(前出の竹輪氏) こうして、犯罪組織は強盗に入る家を絞り込んでいくのだ。 では不審な電話がかかってきたなど、自分や家族が闇名簿に載っている心配がある場合、どうすればいいのか。元警察官でセキュリティコンサルタントの松丸俊彦氏は、「一度載ってしまった情報は消せない」としたうえで、情報を更新させないことが大事だと言う。 「飛び込みのリフォーム業者は家の中に入れない、不要なアンケートには答えないなど、日々の心がけが大切です。 また家の防犯も強化すべき。窃盗犯は、侵入に5分以上かかると7割があきらめるというデータがあります。窓ガラスに防犯用のフィルムを貼る、鍵は新しいものに替えるなどして備えましょう」 強盗に遭った被害者の大半が言うのは、「まさか自分が……」という言葉だ。他人事だと思わず、いますぐ対策しよう。 「週刊現代」2024年11月9日号より
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