亜大は「おじさんばかり」 運命の一言で入学も…驚いた先輩の姿「えらいところに来たな」
亜大の練習参加…与田剛氏の隣で投球し、得た“合格通知”
すでにセレクションは終了していた時期だったが、特別に受けることができたという。「ちょうど阿波野さんたちが(卒業で)抜ける年で、亜細亜はピッチャーを多く取っていたんです。それもあって『見てくれるみたいだぞ』『じゃあ行こう』ってことでね。ヨッシャーと思って、いろいろ練習もしていきました。その時に受けたのは僕ひとりだけでしたね。アップして、キャッチボールして……。ブルペンでは(亜大の)矢野総監督が見ている前で投げたんです」。 その結果、“合格”となった。「『ウチに来い』って総監督に言われました。周りはみんな絶対落ちるって思っていたみたいですけどね。球は遅いけど、コントロールと球持ちだけはすごく評価されたんですよ」。川尻氏は笑みを浮かべながら、さらにこう付け加えた。「あの時、僕は(3学年上の)与田さんの隣で投げたんですが、当時の与田さんは球がむちゃくちゃ速いんですけど、コントロールが悪かったんです。それで僕のコントロールが目立ったのかもしれないですね」。 たまたま隣で投げた偶然がプラスに働いたということか。「総監督に『こいつはいける』っていきなり言ってもらえましたからね。僕が(亜大に)入れたのは、もしかしたら、与田さんのおかげだったかもしれない。その可能性はありますよ」。神宮球場で亜大の試合を見たこと、父の草野球チームに亜大野球部出身者がいたこと、そして荒れ球の先輩剛腕の隣で投げたこと……。いろんな条件が重なって縁ができたわけだ。 もっともいざ入ってみると「おじさんばかりでびっくりした」という。「だってひげをはやして、鉢巻きして、ステテコ姿のオヤジが寮の中を歩いているわけですよ。この人たち、何なんだろうって思いました。3歳くらいしか違わないのに、ホントにおじさんだったんでね。そんなに怖い人はいなかったんですけど、えらいところに来たなというのが第一印象でしたね」。こうして川尻氏の亜大生活が始まった。
山口真司 / Shinji Yamaguchi