引退した競走馬はどうなる?馬術用への再調教に意外な苦労「愛される馬になるべく」地道に、根気よく
パリ五輪で日本が92年ぶりにメダルを獲得した馬術。選手の技術は勿論、馬の美しさに魅了された人も多いのでは。馬術で使用する馬の多くは、引退した競走馬。成績の低迷などで引退した競走馬は引き取り手が見つからず、行き場がなくなってしまうケースも多いという。そんな引退馬を、馬術などで使用する乗用馬として暮らせるよう、リトレーニングを行っている「特定非営利活動法人サラブリトレーニング・ジャパン」の原田さんに話を聞いた。 【写真】砂埃が舞う美しいリトレーニング風景 ――競走馬を、どうやって乗用馬に? 原田:競走馬を引退することが決まれば、引退馬を支援する活動にご賛同いただいた馬主様、調教師様から一般財団法人ホースコミュニティを通じて当施設に連絡が入ります。 そこから、どこでも誰からも愛される馬になるべく、乗用馬としてのリトレーニングが始まります。例えるなら、F1のマシーンをファミリーカーにするイメージ。リトレーニングが修了した馬は年3回、ネットオークションで販売し、乗馬クラブなどに引き取られます。 ――リトレーニングで大変なことは? 原田:やはり引退直後は気性が落ち着かず、手がかかります。生まれた時から「少しでも速く」と前方向に向いていた競走馬の意識を、乗用馬では変化させなければいけません。まず人とのコミュニケーションが大事。犬で例えるなら「お座り」「待て」ができる状態を構築します。 更に競走馬では経験しない小回りや、ゆっくりステップの練習も必要です。今までとは筋肉の使い方が全く変わるので、コツコツ練習を積み、段階的に障害を飛び越えるような訓練をします。期間は約6カ月。地道に繰り返し、根気よく、セカンドキャリアへの準備を整えます。 ――乗用馬は引退すると、どのような暮らしを? 原田:ゆっくり余生を過ごせる馬は功労馬など一部の馬になりますが、放牧地等で過ごすことになります。馬によっては人とふれあうセラピーホースとして時間を持つこともあります。 ――引退馬のその後の観客についての課題は? 原田:馬の生涯を通して、役割を持たせることが課題ですね。「誰かの役に立ち、かわいがられながら、それぞれの馬が充実した人生を送って欲しい。競走馬として生まれてきたけれど、競走馬の役目を終えた馬たちにも『当たり前にある未来』を与えたい」これに尽きます。 ◇ ◇ 主に競走馬に使われるサラブレッドは、国内で年間7000頭以上が誕生し、5000頭以上が引退するそう。受け皿が少なく、リトレーニングには多額の費用も必要。ふるさと納税制度からサラブリトレーニング・ジャパンを支援することも可能で、詳細はHPに記載されている。幸せな生涯を送る馬が一頭でも増えることを願って止みません。 (よろず~ニュース特約・ゆきほ)
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