5月「立夏」のころに「必ずしておくべきこと」って?【田野岡メソッド・二十四節気のかんたん養生】
再春館製薬所の田野岡亮太です。1年に二十四めぐる「節気」のありさまと養生について、隔週でここ熊本からメッセージをお送りします。 【田野岡メソッド/二十四節気のかんたん養生】5月編(下)
「土用」とは、消化機能をケアすべきタイミングです
前回記事では「立夏」の話と、その前の「春土用」について説明しました。 季節の変わり目である土用の期間は「土の気が旺(さかん)になる期間」と言われていたようで、「季節の変わり目なので、農作業などで無理をすると体調が崩れやすい」という先人の戒めを込めた想いだったようです。 中医学が大切にする中国の古い思想のひとつに「五行思想」があります。自然界に存在するものすべてを木・火・土・金・水の5種類で解釈しようという考え方です。 「土」は、土に埋めておくと養分になって次の命につながる……というように、「受け止めて次に生かす」という働きをします。これは身体の中では、食べた物を身体のパワーに変える“脾(=消化機能)”と重なり合います。季節の変わり目で体調が崩れやすい土用なので、体調を支えるおなか(=消化機能)のケアをしましょうね、というわけです。 「土用の丑の日」とよく耳にしますが、この丑は日にちを十二支で数えた時の呼び方です。子・丑・寅・卯……と順番に続きますが、地球の地軸の傾きを反映すると、開始の時は子ではなく寅になるようで、寅が開始であれば“丑”が終わりの時になります。「季節の変わり目の土用の、十二支数えの終わりの時」に身体をケアする……そんな想いから栄養のあるものを摂る習慣になったのかもしれません。ちなみに、ウナギは消化に少しエネルギーが必要な食材です。夏土用を楽しめるように、今からおなかの調子を整えることをオススメします。
土用のお腹の調子を保つために「すべきこと」とは?
季節の変わり目の土用の期間に特に気遣っていただきたいこと……それは「よく噛んで食べる」ことです。基本的なことのように感じますが、季節の変わり目は外気の変化の影響でおなか(=消化機能)が少しお疲れ気味に。そんな時こそ、食べ物を物理的に細かくする「噛む」という働きでおなかの消化作用をサポートしてあげてください。 特に「朝ごはんを食べる」ことは身体の調子を整えるはじめの一歩になります。脳と腸は身体の中でとても関連深いと言われています。脳は光を感じることで朝を認識しますが、腸には光が届きませんので“食べ物”で朝を認識します。朝のおなかは働く準備をしているとイメージすると「柔らかい、温かい」ものがおススメです。季節の変わり目だからこそ「よく噛む」ことが加わるとおなかは調子を保つことができます。 春の土用のころには、ちょうど「八十八夜」と呼ばれるタイミングも到来します。立春から数えて88日目で、茶葉が春の恵みを土からたっぷりと吸い込んで、養分を蓄えているから飲むといいよというタイミングです。2024年は5月1日でした。薬膳の世界では、緑茶は身体をゆっくりと冷ます働きを持つ“涼性”と言われています。身体は熱エネルギーで動いているので、熱の「冷ましすぎ」は不調を招いてしまいます。 三寒四温で始まる春の季節から暑さが際立つ夏にかけて、「身体に負担なく緩やかに冷ましたい」と感じた時に緑茶はおススメです。春の陽気をたっぷりと含んだ新茶が手に出来れば、心も嬉しくなりますね。