なぜ企業は「パーパス作り」に躍起なのか? ビジネスの「次の使命」を山口周に聞く
企業が利益だけを追求していればいい時代はとうに終わった。多くの企業がSDGsや人的資本経営を掲げ、社会的な存在意義を見出そうとしている。 【画像】疑うべき常識は何を学ぶことで見えてくるのか しかし、利益追求がビジネスの大義として認められなくなったいま、ビジネスはどこに向かうべきなのか。 大手広告代理店や戦略コンサルを経て、独立研究家として活動する山口周は、「社会運動を起こすことがビジネスの次の使命だ」と説く──。その理由、そして実践の道筋とは? クーリエ・ジャポンによる独自インタビュー記事はこちらから
企業が「パーパス」作りに奔走する理由
私は、本書を通じて、ある希望に満ちた仮説を皆さんと共有したいと思っています。その仮説とは、 社会運動・社会批判としての側面を強く持つビジネス=クリティカル・ビジネスという新しいパラダイムの勃興によって、経済・社会・環境のトリレンマを解決する というものです。 私は2020年に著した『ビジネスの未来』において、安全・快適・便利な社会をつくるという目的に関して、すでにビジネスは歴史的役割を終えているのではないか? という問いを立てました。 原始の時代以来、人類の宿願であった「明日を生きるための基本的な物質的条件の充足」という願いが十全に叶えられた現在、私たちはビジネスという営みに対して社会的意義を見出せなくなりつつあります。 この問いに対する前著での私の回答は「条件付きのイエス」というものでしたが、その後も、営利企業あるいはビジネスの社会的存在意義に関する議論が沈静化する兆しはなく、世界経済フォーラムをはじめとした会議の場においても、この論点は主要なアジェンダであり続けています。 ここ数年、世界中で盛り上がりを見せている「パーパス」に関する議論も、この「このビジネスに社会的意義はあるのか?」という、素朴だけれども本質的な質問に対して答えることのできなかった人々が引き起こした一種のパニック反応だと考えることもできるでしょう。 私は、本書を通じて、このウンザリさせられる問いに対して、ある仮説としての回答を提唱したいと思います。それが前述した命題、すなわち「社会運動・社会批判としての側面を強く持つビジネス=クリティカル・ビジネスという新たなパラダイムの勃興によってそれは可能だ」という回答です。