「価値はない」と言われたレテギの覚醒。「サモラーノを彷彿と…」数奇なキャリアを歩む男のストーリー【コラム】
⚫️SNSで辛辣な意見が飛び交ったアタランタへの移籍
同クラブ所属のジャンルカ・スカマッカが、8月4日のパルマとのプレシーズンマッチで、左膝前十字靭帯を断裂。年内中の復帰は絶望的となった。 昨季は、後半戦でブレイクし、リーグ戦で12ゴールを奪い、さらに、UEFAヨーロッパリーグ(EL)では、難攻不落の地、アンフィールドでドッピエッタを記録。リバプール撃破の立役者となり、EL優勝に大きく貢献した。 この大型FWに代わる点取り屋として、白羽の矢が立ったのがレテギだった。交渉は瞬く間にまとまり、8日には移籍が成立。2200万ユーロ(約35億2000万円)の移籍金で契約は締結された。 だが、昨季7得点に終わったFWに、サポーターの反応は冷たく、「これほどの価値はない」と辛辣な意見がSNSで飛び交っていた。 しかし、今季が開幕すると、良い意味で期待を裏切った。初戦のレッチェ戦で2ゴールを上げると、第7節の古巣ジェノア戦で3得点を記録。たった7試合で、昨年の得点数に早くも並んだ。その後も着実に得点を積み重ね、第11節の首位ナポリ戦ではベンチスタートとなったものの、ボレーを流し込み、リーグ戦の得点を11得点に伸ばした。 絶好調のレテギを、元イタリア代表でセリエA通算142得点のボンバー、"ボボ"・ビエーリが解説する。
⚫️レテギのプレーは「サモラーノを彷彿とさせる」
「エリア内の動きがとても素晴らしい。マークを外す動きに優れ、適切なタイミングで、適切な場所にいることができる。これは大きな才能だ。常にゴールを狙い、こぼれ球やクリアボールの位置にレテギがいる」とゴール嗅覚に優れた “9番”の特性を持ち合わせていると強調する。 「ヴェネツィア戦では、とても難しく、素晴らしいゴールを決めているね。GKが飛び出してきたところを、チップキックで流し込んだ。これは、ゴールから数メートルのところで、一瞬の隙を見逃さずに得点に結びつける能力を備えているだけでないことを意味するものだ。技術的にも良いものを持っている。このような選手は数少ない」と、得点感覚だけでなく、テクニックの面でも非凡なものを持っていると続けた。 そして、「チームメイトと"プレーをつなげる"能力が、(イバン・)サモラーノを彷彿とさせる」と言明。インテル時代にチームメイトだった、チリのゴールハンターを想起させると語った。 さらに「これから移籍市場の目玉となるだろう。市場価値は6000万から7000万ユーロに達するはず。マンチェスター・ユナイテッドやパリ・サンジェルマンといった点取り屋を必要とするクラブが、獲得を目指すのではないか」と予測した。 ”たった”2200万ユーロで譲渡してしまったジェノアは、悔恨の念を抱いているに違いないが、実はユベントスも獲得の調査に乗り出していたことが明るみに出ている。ドゥシャン・ヴラホヴィッチの控え要員としての補強を検討していたようだが、レテギの得点はセルビア代表FWの6(PKが3得点)を大きく上回る。 そして、アタランタの智将、ジャン・ピエロ・ガスペリーニは11得点のFWをこう語る。 「功績は彼自身のもの。選手が持っている才能を引き出せるように助けることは可能だが、私が何か特別なことをしてあげられるわけではない。我々はアイデアを共有することができる。 だが、最終的に重要なのは選手の対応だ。マテオの対応は素晴らしかった。我々が信じ、思い描いていることをピッチの上で適応できたのは、完全に彼自身の手柄だ」と辛口の指揮官が手放しで絶賛した。 残りは27試合。これからゴールを量産し続ければ、ゴンサロ・イグアインとチーロ・インモービレが持つ36得点のセリエA最多得点記録更新も夢ではないだろう。 (文:佐藤徳和)
フットボールチャンネル